記事一覧

乙女のキネマ論報 其の三 Dolls

座頭市が好評な北野作品の中でも一番美しい映画
と称しても良いと思われる『Dolls』が今回取り
上げる作品。

北野作品を静と動で大胆に分けるとするば、この
Dollsはその中間に位置する作品だと思います。

全体を通して一見する分には静かな印象を受ける
作品かもしれませんが、映像から放たれている激
しくも静かな鼓動は見てる者の心に言葉で無くイ
メージとして胸に強く響いてくる物が感じられま
す。

物語は、極側の情愛に生きる三組を追いかけるロ
ードムービーの様な感じです。

恋人に裏切られ自殺を図り自我の崩壊した女性と
、その女性を裏切ってしまった男、その男女が宛
てのない逃避行へと彷徨う姿。

死期を悟ったヤクザと、その男を何十年も待ち続
けた女性の物語。

人気アイドルが不慮の事故で引退を余儀なくされ
るも、彼女を慕い続ける男の物語。

この三つの物語を軸に静かで激しく、そして悲し
みに満ちた愛の形を描く作品です。

一見すると異質な関係に見える彼らも、想いが留
まらず、行き付くところまで行ききった場合の究
極の愛という物に焦点を当ててします。

どれが正解でもなく、どれも間違いでも無い。

ただ、想う。そこに居るから想う。
そんな切なくも凛々しい男女の有り方を北野監督
流の解釈で作られた作品です。

そして、今までの北野作品について『北野ブルー
』という表現がされますが、それら色を強く感じ
させる作品群の中でも、このDollsはその色彩が
一番色濃く、見てる物を圧倒させる程の美しさで
す。

今作では『赤』という色が強く主張され、赤の持
つ激しさ、切なさ、強さなどが、脚本と見事に共
鳴しており、見てる者に色々な想いを思い浮かべ
させてくれる演出になっています。

下世話な表現をすると、確かに集客が期待出来る
様な作品では有りませんが、個人的には良く出来
た作品だと思います。

監督がイメージする世界観が満足出来るレベルで
再現出来てるのではないでしょうか。

見ていると、監督の息遣いまで聞こえてきそうな
ほど作品全体に監督の『意思』が色濃く感じます

説明ばかりが前に出てたり、ト書きの細部まで不
必要に映像にしちゃってりする昨今の映画と比べ
ると、作品性、芸術性共にかなり高い次元で完成
されてる、そんな印象をcocはDollsを見て感じま
した。

それでは今回はこのへんで。
また次回の更新でお会いしましょう。

======================

Dolls(2002/日)

監督/北野武
脚本/北野武
出演/菅野美穂/西島秀俊/三橋達也/松原千恵子
  /深田恭子/武重勉/岸本今日子  
私的評価(10点満点)★★★★★★☆☆☆☆

======================

トラックバック一覧

コメント一覧