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乙女のキネマ論報 其の五 ミスティックリバー

前評判がかなり高いこの作品。
観て見ての感想はと言いますと、惜しい!意図は
判る!でも惜しい!って感じでした。

大雑把にこの映画を評するなら『もう1つのスタ
ンドバイミー』って感じです。

ですが、少々脚本の力の入れる方向をミスしてる
かなって思います。

3人の少年のうち、1人が被害者という形で事件
に巻き込まれ、残りの2人は難を逃れる。

被害者の少年は性的虐待を受け、心に大きな傷と
闇を抱える事になり、3人は大人へとなっていく

これが導入部分なのですが、この導入分のみで、
主人公達の少年期の物語は終わるのです。

そしていきなり25年後に・・・

そして、3人は娘を殺された父親、刑事、容疑者
という形で再会し、最悪の結果へと進んでいくの
ですが、大筋の脚本は良いのです。

しかし、少年達が成長していく過程を細かく描か
なかったので、1人の少年が受けた傷と、それに
向かい合いながら育って行く3人の葛藤や友情、
または裏切りなどの背景が観ている側に濃く伝わ
らないまま、25年後の3人の物語が始まってし
まう。

すると、その25年後の3人の微妙な心理描写が
活きてこないんですよね^^;

言ってしまえば、『昔、友人だった』ってだけで
、それ以外の要素が絡んできません。

『昔、友人だった』だけでは・・・彼らの中に生
まれる疑念や葛藤を重く感じ取ることは困難で、
単に知り合い程度にしか見えなくもないのです。

それが、映画全体の雰囲気を軽くしてるように思
えて仕方有りませんでした。

ラストで娘を殺された父親が「もう少し早ければ
な・・・」っと言うセリフも、何か軽く感じてし
まうのです。

どれくらい悔いているのか?
どれくらいの絶望なのか?
どれくらい非痛なのか?

それを協調する伏線として本来は描くべきだった
彼ら主人公達の青年期の欠落が映画を観終わった
時に、妙な違和感を残してしまう原因ではないか
と私は思いました。

素材が良いだけに、そこらへんが非常に惜しいと
感じました。

駄作では無いですが、傑作の可能性を秘めていた
佳作って感じですね。

それじゃ、今回はこのへんで。
また次回の更新でお会いしましょう。

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MISTIC RIVER(2003/米)

監督/クリント・イーストウッド
製作総指揮/ブルース・パーマン
製作/ロバート・ローレンツ/ジュディーGホイト
脚本/ブライアン・ヘルゲランド
出演/ショーン・ペン
  /ティム・ロビンス
  /ケビン・ベーコン
  /ローレンス・フィッシュバーン
  /マーシャ・ゲイ・ハーデン
  /ローラ・リニー
私的評価(10点満点)★★★★★★☆☆☆☆

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