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乙女のゲームのススメ Vol.79 ファミコン探偵倶楽部II うしろに立つ少女 NP版


はい、またもや旧ハードゲームの話題^^;

いやね、実は最近cocの中でSFCが物凄い勢いで再評価されてるんで
すよ。

っと、その【SFC再評価】に関しては、また別の機会にお話すると
して、今回は【ファミコン探偵倶楽部II うしろに立つ少女 NP版】
についてのお話をします。

まず、本題に入る前に『NP版?』っと疑問を覚える方もおられるか
もしれませんので、まずはNPについてリンクを交えて軽く説明。

NPとは【ニンテンドウパワー】の略称で1997年に任天堂がローソン
と提携し、ローソン店頭に設置されてる通信取引端末【ロッピー】
を介し、SFCのゲームが書き換え出来る専用のソフト【SFメモリカ
セット
】に安価でゲームを書き換えできるようにと始めたサービス
で、後にGB版のサービスにも拡大したものです。

サービス自体は素晴らしいものでしたが、時期的に任天堂はSFCの
次世代機【NINTENDO64】を発売し、更にゲーム業界ではプレイステ
ーションがゲーム市場のシェアをドンドン拡大し、10年以上覆る
ことが無かった家庭用ゲーム機の現行機種シェア1位の座をソニー
が任天堂から奪う形で、話題は全てプレイステーション一色の様相
を呈してた頃でしたので、NPは殆ど話題に上る事が無く、任天堂も
積極的な広報活動をしませんでしたので、時代の渦に飲み込まれて
しまったサービスです。

私的見解として、この頃から任天堂は既に立ち上がり相応の資金を
投入してしまった事業を敗戦処理のような形で無理やり市場に投入
する悪い傾向が目立ち始めました。NPしかり、64DDしかり…

そんな不遇の境遇だったNPですが【NP専用タイトル】、つまり書き
換えでしか入手出来ないNPオリジナルのタイトルも28作送り出して
おり、今回お話する【ファミコン探偵倶楽部II うしろに立つ少女
NP版】もそのNP専用タイトルの一本です。(NPについてはテキスト
後半に更に後記有り)


この【ファミコン探偵倶楽部II うしろに立つ少女 NP版】は昨年
GBAで発売され話題を呼んだファミコンミニシリーズにラインナッ
プされていた、ファミコンディスクシステムで1988年に発表された
名作ADVのSFCリメイク作品となってます。

知らない方の為に軽くゲーム内容を紹介しますと、1作目にあたる
【消えた後継者】で、とある事件調査していた空木探偵事務所所属
の少年探偵は捜査中に何かが原因で記憶喪失となってしい、自ら記
憶を取り戻す為にわけもわからず事件の再調査に乗り出す。その事
件の中に自分の記憶を蘇らせる何かがあると信じて。

事件を1から追いかけ直す少年はやがて事件の核心部分へと辿り着
き、そして失った記憶は取り戻されるのだが、それは衝撃的な結末
を呼ぶ鍵となっていた。

そして、2作目にあたる【うしろに立つ少女】は1作目で少しだけ
語られた少年の過去を結ぶ形で、少年が探偵になるキッカケから物
語がスタートしていくという内容です。ゲームシステムはオーソド
ックスなテキストアドベンチャーですが、発表当時は完成度の高い
シナリオが高く評価され、今尚多くのファンが支持をしている名作
です。


で、先頃発売されたGBAのファミコンミニで出された同シリーズの
1作目と2作目は、リメイクでなく、ディスクシステム版のベタ移
植、いや正確にはGBA上ディスクシステムのエミュレーションを動
かし、ディスクシステム版のロムデータを動かしてるだけにしか過
ぎませんでしたが、NPで出された上記タイトルはファミ探史上唯一
のリメイク作品で、SFCのスペック上で可能な範囲でグラフィック
の強化やサウンドの強化、ゲームシステムの再調整、フラグ立て周
辺の微調整などが行われた秀作となっています。

オリジナル版(ディスクシステム版)を熱狂的に支持するファンから
は、恐怖感が薄れた等の評価を受けるケースもあるNP版ですが、私
的にはNP版の方が総合的に上ではないかなっと思っています。

それでは本題のNP版【うしろに立つ少女】について話を進めて行き
ます。

まず特筆すべきは、cocらしくない切り口ですが【グラフィック】
の強化ですね。

あのチープなオリジナル版では表現しきれなかった登場人物の細か
な表情の変化や、スペックの問題で行えなかったグラフィック面で
の演出効果が効果的に使われており、秀逸なシナリオの世界観を更
に深みへと導いてる点は凄く評価出来ます。

ここ一番のアニメーション効果とカットイン効果を組み合わせた演
出にはドキ!っとさせられたり、後半部分では物語が加速していく
なかで、上手くハラハラ感を煽る演出もあり、良い仕事してます。

次に好感を持てるのがサウンド面の強化ですね。やはり発売された
時期を考えるとチュンソフトから世に送り出されたサウンドノベル
という新基軸のADVの後発にあたるわけですから、SEの演出にも細
かい配慮がされており、【うしろの少女】の不気味な世界観の確立
に大いに貢献しています。

私的にはヘッドホンでプレイすることを強くオススメします。
もう、たまんないからw

突然、しかも気付くか気付かないか微妙な感じで耳に飛び込んでく
る不気味なSEに「やめろ!やめてくれ!」っとw
油断してる時に聞こえたりするから「今!何か聞こえた!!なに今
の!?ちょっと!!やめてっつーの」ってな感じでテンション上が
りますw

オリジナル版の方が怖い、NP版の方が怖い、怖さなら【かまいたち
の夜】の方が怖い等々、人によって様々な見解はあるでしょうが、
1つ確実に言える事、それは比べる比べない以前に、確かにNP版も
怖いということです。要は怖さの種類が違うのかもしれませんね。


さて、評価出来る部分を書いてきましたが、勿論リメイク物の宿命
とも言える【残念な部分】というのも存在します。

まず、シナリオの再構築ですね。
これは、上記2つの視覚、聴覚の演出が強化された為、ゲームの進
行のテンポもかなり速くなってしまったことです。

そして、フラグ立てもシステムの変更で詰まることが恐らく一切な
くなったので?っと思うほどスムーズに物語が進行します・

システムの変更というのは、場面毎に定められてるフラグ立てへの
キーコマンドに誘導するという意図で、決定的なキーコマンドに辿
り着く過程の、つまりこれを選べば、自ずと次はこれを選ぶでしょ
っという感じで計算され、フラグキーコマンドへの流れの導入コマ
ンドが黄色く表示が変化するのです。

例えば『そういえば、あの夜、校庭で物音が聞こえたような?』と
いう証言が発生した後【聞く】→【時間】→【人物】→【行動】→
【場所】という流れがあったとして、【場所】というフラグを発声
させる必要がある場面だと、まず【聞く】が黄色く表示されるので
す。

【聞く】以降はさすがに黄色く表示されたりはしませんが、【聞く
】に誘導さえしてしまえば、よほどの事が無いかぎりフラグ立て完
了までの流れから外れないであろうというバランスになっています

つまりは【親切設計】なわけです。

しかし、この【親切設計】が効果を発揮しすぎて、考える余地がな
くなってしまってます。

ですので、NP版は言い方を変えると【紙芝居】な作品になってしま
ってます。

ですから、本来ゲームとして重要なゲーム性が著しく低下している
わけなのですが、それでもプレイヤーをぐいぐいと引き込んでしま
うような吸引力は一体なんなのでしょう。

ゲームとしてゲームらしさが薄れてるのに、ついつい没頭して物語
を進めてしまう。これはやはりシナリオの力なのでしょうね。

さすが、宮本氏、横井氏に次ぐ、任天堂3人衆と評されることもあ
る、鬼才【坂本賀勇】氏がシナリオを担当しただけのことはあるな
っと、少し贔屓目に評価してします。

坂本氏は、宮本氏や横井氏のようなスター性、カリスマ性は無いの
ですが、実は結構な数の任天堂タイトルを手がけており、そのコン
セプトパワーは確かに非凡なものを感じます。

氏の関わった作品を思いつくまま挙げるとしますと、【メトロイド
シリーズ】【トレード&バトル カードヒーロー】【パルテナの鏡】
【カエルの為に鐘は鳴る】等をディレクション又はプロデュースし
ていたと記憶してます。

しかも有名な話ですが、氏が【ファミコン探偵倶楽部】シリーズの
脚本を作成するまでに読んだ作品は横溝正史の【犬神家の一族】と
【悪魔の手鞠歌】の2編しか読んだことがなったという点も彼の非
本さを象徴してるエピソードです。

故に、ファミ探一作目が氏の読歴を色濃く反映してるのも頷けます

そんな氏の決して潤沢とは言えない読歴から、あの絶妙な緩急を付
けたファミ探偵の脚本が作られ、2作目でも多くのユーザーを吸い
寄せた脚本はNP版でゲームシステムの再調整からくる副作用で生じ
た没ゲーム性の中にあっても、プレイヤーを飽きさせないだけの魅
力があるのですから、やはり名作と言わざる負えないと改めて感じ
ます。

ただ、やはりゲームなのですから、没ゲーム性に至ってしまった結
果は【残念】と表現するべきでしょうね。


以上、これらの点を総合的に加味して結論を出しますと、やはり今
尚もって【ファミコン探偵倶楽部II うしろに立つ少女 NP版】はプ
レイする価値十分有りだとcocは思います。

そして、プレイすると、是非とも1作目、そして幻の3作目にあた
る【サテラビュー配信ソフト】として発表されていた【BS探偵倶楽
部 雪に消えた過去]】そして、シリーズ中一度も実現してない、空
木、主人公、あゆみの三人がキチンとした形で一つのチームとなり
事件の捜査に乗り出していくような(*1)新作の登場を渇望する気持
ちになります。

しかし、1作目と2作目がGBAでベタ移植として登場しており、GBA
での両作品のリメイク実現の可能性は著しく低下し、何よりも坂本
氏が続編の製作に大して乗り気(*2)ではないので、新作の登場も難
しい現状・・・。

ですので、現在ファミコンのチープなグラフィックとショボイ音声
以外のファミ探は、今回取り上げてる【うしろに立つ少女】のNP版
しか存在せず、ファミコンベースのシリーズの進化を確認する手立
ては、この作品しかありません。

ですので、未プレイの方は機会があれば是非遊んで頂きたいなっと
思うcocさんなのですが、1つ問題がありまして・・・。

ご存知の方も多いでしょうが、この作品はNP専用タイトルで、パッ
ケージ販売はされていません。

NP専用タイトルの中には後にパッケージ版も発売されたタイトルも
あるのですが、この作品は書き換え専用のままなのです。

そして現在はローソンでのロッピー端末による書き換えはサービス
を終了しており、肝心の【SFメモリカセット】も製造及び販売が終
了しています。

手元にSFメモリカセットが有るのであれば、任天堂のサービスセ
ンターに郵送でSFメモリカセットを送り、有料で2005年3月現在も
ソフトデータの書き換えは行ってくれてるのですが、SFメモリカセ
ットが無いと、どうにもなりません。
(書き換え申し込み手順については文末備考にてリンク紹介)

ですが、今でもSFメモリカセットを入手する方法はあります。
当然ですが足でショップを回る・・・です。
運が良ければ数百円から4千円程度の中古が見つかるかもしてませ
ん。

そして楽な方法としては、各オークションサイトに出品されてるも
のを落札するという方法もありますね。

オークションでは、2000円~4000円位が相場のようです。

興味が沸きましたら、各オークションサイトにて【SFメモリカセッ
ト】と検索してみてください。弾数は少ないですけど、大手サイト
なら大抵は引っかかるはずです。


それでは、難しいと判っていても、新作を熱望しているcocさんの
私的レビューはこれにて終わりとします。

ではまた次回の更新でお会いしましょう。


追記

サテラビューに手を出さなかった過去の自分に説教したくなってる
今日この頃です…


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*1

1作目は主人公がゲーム後半まで記憶喪失の状態で、空木は不在、
2作目はあゆみが助手になる以前の話し、3作目はあゆみを主人公
にした外伝的作品であり、探偵事務所の所長である空木と主人公、
そして、あゆみが3人一体となって序盤から活動する物語は未だに
存在しない。


*2

坂本氏曰く、サウンドノベルや逆転裁判などテキストADVにおいて
の新基軸的な発想が無いかぎり、任天堂からこの手の作品を出す事
は無いと思うっといった旨を以前氏がインタビューで答えてます。

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備考

ニンテンドウパワー概要
http://www.nintendo.co.jp/n03/index.html

SFメモリカセット概要
http://www.nintendo.co.jp/n03/memori/index.html

ニンテンドウパワー SFC書き換えタイトル一覧
http://www.nintendo.co.jp/n03/sf/top.html

ニンテンドウパワー書き換え申し込み手順
http://www.nintendo.co.jp/n03/riyou/index.html

ファミコン探偵倶楽部II うしろに立つ少女 NP版 公式サイト
http://www.nintendo.co.jp/n02/shvc/btcj/index.html




*原文投稿時間不明の為、00時00分として転機しました。

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