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乙女から見る21世紀のコンシュマー産業の行方Vol.59 再利用するだけじゃなく、もっと踏み込んだ仕組みが必要

3月23日、米国で行われた【Game Developers Conference 2006】に
て任天堂代表取締役社長の岩田聡氏が基調講演を行い、兼ねてより
任天堂が開発を進めている据え置き型家庭用ゲーム機の次世代機【
レボリューション(仮称)】において、任天堂が過去に提供したコン
テンツ、つまり旧世代ゲーム機のソフトをダウンロードして遊べる
ようにしたいという構想の中に、セガ社のメガドライブ、NECのPC
エンジンのソフトも導入していくという方針を発表しました。

このような取り組みには個人的に大賛成です。
ゲームソフトというものは、ゲーム産業自体がまだまだ市場として
若い部類のものである為か、業界において最も大切なソフト資産と
いうものへの取り組みがまだまだ完成していません。

ゲームソフトを消費物を考える方も居ますが、やはり消費だけでは
終わらないタイトルも多く存在します。

これらのソフトの持つ著作権等々の問題で、なかなかアーカイブ的
な展開が難しいのですが、既に家庭用ハード事業から撤退してる、
セガ社とNECのハード上で動いていたコンテンツを引き込むという
今回の決定はとても評価出来ると思います。

そして、こういった事柄で重要なのが、エミュレーターという要の
存在を忘れてはいけません。

エミュレーターと聞いて、著作権侵害等の問題からくる偏見で眉を
しかめる方も多いと思いますが、エミュレーターそのものが悪いわ
けではありません。

詳しく無い方に簡単に説明しますと、エミュレーターという物は、
特定のハードウェアを、別のハードウェアの中で、ソフトを実行さ
せることで、擬似的に別のハードウェア環境を再現して動かす技術
です。

最近の市場でも、このエミュレーターを製品の中に搭載して販売さ
れてるものもありました。年々需要が伸びてるレトロゲームという
素材に着目し、過去のタイトルをリメイクしてヒットしたゲームボ
ーイアドバンスのファミコンミニシリーズです。

これはソフトの中にエミュレーターソフトが搭載されています。

GBAにファミコンミニのソフトを差し込み電源を入れると、内部
ではまずソフトの中に搭載されてるファミコンのハードウェア環境
を擬似的に再現するエミュレーターソフトが自働で立ち上がり、そ
のエミュレーターソフトの処理を間に通して、ファミコンミニのタ
イトルがGBA上で動いているという仕組みになっています。

ですから、ファミコンミニシリーズのソフトはGBAに移植されたも
のではないのです。ROMデータは当時のファミコンソフトの物をそ
のまま使っているのです。

この手法にする最大のメリットは、制作費を大幅に削減させること
ができることです。

GBA上でファミコンのハードウェア環境を擬似的に再現出来るエミ
ュレーターソフトさえ作ってしまえば、現存するファミコンソフト
の殆どがデータ的に全く手を加えず動かせるわけですから、制作の
手間は一気に軽減されます。

逆に過去のソフトを最新ハードに移植する場合、結構大変なんです

当時のプログラムソース、つまりゲームの設計図ですね。そういう
のが細部まで全て残っているならば、それを最新のハードウェアに
併せてプログラミングをやり直し、もしプログラムソースが残って
いなければ、現存すろロムデータからデータを吸い出して解析を行
い、まずオリジナルのプログラムを抽出し、それらを最新のハード
ウェア上で動く様に組み直すことになります。

費用対効率で考えると、この移植というのは時代的にあまり良い選
択だとは言えません。まぁ、最近は既存タイトルのベタ移植という
ものは殆ど存在せず、実際コードを組み直すなら根本的にリメイク
を施して製品に仕上げるのが通例になってきてます。

しかし、リメイクにも、その出来、不出来のばらつきが生じますし
、オリジナルの良さはオリジナルでしか体現できないものですので
、ファミコンミニのようなエミュレーターを介して、オリジナルデ
ータをそのまま使用するという選択は今後も増えて行くのではない
かと思っています。

そして、このエミュレーターというものが、ゲームコンテンツのア
ーカイブ化にとってとても重要な存在なのです。

エミュレータというのは、いわば劣化しないハード、物理的に実体
が存在しないハードなので、運用面でもコスト的にも非常に魅力的
な素材と言えるでしょう。(PSE問題も絡みませんし)

海賊版、コピーなどといった、宜しくない方面で着目されることが
多いエミュレーターですが、エミュレーターそのものに違法性があ
るわけではなく、そのエミュレーターで動かすロムデータの出所に
問題があるのです。

そして、コンテンツ自体の著作権の管理という意味において、業界
がキチンとした組織を立てる必要もあると思うのです。

権利をタイトル個別に任せるのでなく、協会や何かがキチンと権利
を統括して管理保全していく仕組みがない現状がそもそも問題なの
です。

つまり、業界自体がコンテンツを消費物扱いしてしまってるのです

少し踏み込んだ話しをしますが、現在ファミコンのタイトルの著作
権が正常な形で守られて、保全されていますか?

業界と中古市場の繋がりが希薄で、過去のタイトルに関しては見て
見ぬ振りというのが現状で、著作権はその殆どが蔑ろにされていま
す。

やはり業界そのものが流通ともっと密度の濃い関係を構築し、キチ
ンとした団体が過去のタイトルをキチンとアーカイブ化し、権利を
保全し運用していかなければ、有用なコンテンツは時の流れに埋も
れていくだけの消費物となってしまいす。

今回の岩田氏の基調講演で発表されたMD、PCEのダウンロード配信
計画のように、今後もそういった過去のコンテンツを動かしていく
機会が増えていくでしょう。

レトロゲームは如何です?ってだけの商売根性だけでなく、今一度
コンテンツを取り巻く環境を整備し直す時期ではないかっとcocは
考えています。

正当性云々の屁理屈を言うつもりはありませんが、実際に現状では
アングラの世界でのほうが旧世代ゲームタイトルのアーカイブ化は
高いレベルで発展していますから…。

そして、そういった側の人の殆どは、それらの資料的価値を重要視
して取り扱ってたりします。

まぁ、中にはどこぞの似非アングラ系雑誌の記事に食い付き、取り
扱う上での知識も皆無なのに手を出し、とんでもない質問をそっち
系のサイトで書き込む人も居ますけど・・・。

まぁ、なんか書きたい事をズバっと書ききれない歯痒さ満載ですが
、とりあえず言いたいことは、公でこういったレトロゲームコンテ
ンツの再利用への取り組みをどんどんやっていって欲しいという事
なのです。そう【公け】にね。


*原文投稿時間不明の為、00時00分として転機しました。

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