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乙女日記 Vol.1191 遅れ馳せながら、福井氏に突入

cocさんって映画や書籍、勿論ゲームもそうなんですが、いわゆる
娯楽メディアで話題に成ってるもの、ブーム化しつつあるものに関
しては、旬の時期に一歩引くという癖があるんです。

話題として頻繁に飛び交ってる時期って、どうしても先入観みたい
なのが知らず知らず植え付けられて、そのもの自体を客観的に見え
にくくするし、純粋に楽しめないような感じがするんです。

だから、ある程度ほとぼりが冷めてから、自分自身の感性とかがニ
ュートラルになっているのを確認してから、時期を置いて対峙する
ケースを取る場合が多いです。

今回、cocの中で"ほとぼり"が冷めたのは【福井晴敏】氏です。
一時期はどこに目をやっても彼の名が取り上げられてるってなほど
、話題の人でしたし、あちこちでネタバレに相当するような企画物
も乱立していましたので、例の如く一線を置いたのです。

【戦場のローレライ】【戦国自衛隊1549】【亡国のイージス】と立
て続けに著書が映画化され、当然の如く映画はあちこちで酷評され
、その酷評の嵐も収まった感じもする今日この頃を頃合と感じ、氏
の著書四作【川の深さは】【Twelve Y.O】【亡国のイージス 上下
巻】を読むことにしました。

前記の3つの映画作品は全て見てはいます。
【ローレライ】については語る言葉を捜すのも億劫なほどの駄作に
仕上がっていて、その出来の悪さが原作への興味までも失わせてし
まったので、暫くは原作に触れる気は起きないかもしれません。

【戦国自衛隊1549】は、映画として前作にあたる【千葉真一】主演
作の方も見ていましたし、戦国時代物、タイムトラベル物という2
つの好物が題材で、更に比較的好きな俳優である【江口洋介】主演
ということもあって、個人的には可も無く不可もなく、まぁ並程度
に楽しめたという程度でしたので、わざわざ原作を読みに降りるま
でには至らないかなっと。

で、問題の【亡国のイージス】ですが、原作を知らないという立ち
位置からの感想としては、結構見れる映画に仕上がっていたと思い
ました。しかし映画の中からも感じられる原作の懐の深さとでも言
いましょうか、原作を知らないにも関わらず、この映画はかなり掻
い摘んで映画にしてるのだろうな、本来の美味しいところは完全に
カバー出来てないんだろうな。そして悪い意味で映画らしく仕上げ
てしまったんだろうなっという印象を受けたのです。

何せ、登場人物が多いのに、各々がかなりキャラとして魅力深い印
象を持たせてる。にも関わらず描ききれてない感じがしましたし、
作品のテーマは振ってるのに劇中でそのテーマに決着を付けず、稚
拙なエンターティメントの帳面返しで誤魔化して終わってる感じで
した。

だから、結構見れる映画に仕上がっていたという表現は、最大限甘
く評価しての表現であり、駄作に仕上がってしまってる映画の中か
らであっても感じることの出来た原作の完成度の高さというものに
、先行評価といいますか、ある種の敬意を含めた労いという意味で
【結構見れる】という表現に落ち着かせたのです。

ですので【亡国のイージス】の映画を見た後に、これはどうしても
原作を読む必要があるなっと感じましたし、前述の"ほとぼり"も冷
めてきてたという時期でもあったので、氏の著書を読み進めること
にしたのです。

実際に著書を手に取る前にネットで軽く調べたところ、氏の経歴上
のデビュー作は【Twelve Y.O】だが、実際の処女作は【川の深さは
】であるということ、そして【亡国のイージス】は【川の深さは】
から【Twelve Y.O】、そして【亡国のイージス】へと物語そのもの
は連作ではないが、舞台背景などのキーワードで関連してる3部作
でもあるという事を知ったので、取り合えず、その3作品を入手し
てきました。

このテキストを書いてる時点では、まだ【川の深さは】しか読み終
えてないので、総括できませんが、今後の印象の変化は覚悟した上
で言うとすると、こんなに夢中に行から行へと目を運ばされるのは
久しぶりです。

さすが、時の人となっただけはあると、生意気に感心したりしてい
ますw

文学風を吹かすのが当たり前で、そうでなければ稚拙と、ややひん
曲がった感のある文芸作品界においては、氏の手法は漫画チックだ
とか突飛過ぎて論理感が希薄だとか言う人も居るようですが、読み
手のインテリジェンスとの駆け引きに終始し、その自己顕示欲のス
パイスに成り得ない作品は低級だと自己陶酔してる人達の勘違い論
評など虚しく感じるほど氏の作品に据え置かれるテーマはシンプル
であり、そのシンプルなテーマに読ませるだけの魅力を付け加え演
出していく手法は冒険活劇のセオリーを熟知した上に、巧妙に読み
手を煙に巻いていく様は、良い意味でとても嫌らしく、そして痛快

日本という実体が希薄な国に対してのイデオロギー定義という、作
品に込められた主題は一見重く、やもすればそれは怨念に近い印象
を取られそうな勢いでもあるのですが、決して思想観念の押し付け
で終わることなく、完成度の高い活劇というフィルターを通すこと
で、一流の娯楽として昇華させてるとこが素晴らしいです。

そして、イデオロギーの提起を感じさせるものであるにも関わらず
、氏はとても人物を描くのが上手い。本来なら対極になりがちな思
想と人物という素材を、恥じることなく同一観で描き、読み手を置
き去りにしないように配慮されてるのも好感がもてます。そういっ
た点を青臭いと表現する人も居るようですが、青臭くあるからこそ
読み手が構えずに世界に引き込まれていけるとも言えるとcocは思
います。

まだ氏の処女作【川の深さは】を読み終えただけですが、これから
読み進めていく氏の作品に向ける期待は膨らみ、そしてそれに応え
てくれると、根拠はありませんが確信してるcocさんなのです。

それでは、今回はこれにて。


*原文投稿時間不明の為、00時00分として転機しました。

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