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乙女から見る21世紀のコンシュマー産業の行方Vol.65 まだまだ論外

PS3が早くも値下げっという見出しで、下位モデル(20Gバイトモデ
ル)の価格を49980円に価格を下方修正する旨の報道が流れました。

しかし、それは驚きでも何でもなく、技術者が狂走から目が覚め、
現実を突きつけられた結果から出てきた、単純な予定調和にしかす
ぎません。

そして、その調和も、自らが抱え込んだブルーレイというカルマが
根強く足を引っ張り、本来在るべき適正価格の域には踏みこめてな
い。

PS3が6万超えという論外な価格設定を発表してから今日に至るまで
、価格の面で語られる機会が多いのですが、PS3の弱点の本質は価
格ではありません。

確かに【たかがゲーム機】に6万円という価格設定は、付ける方も
尋常ではないし、もしそれがユーザーに受け入れられ、飛ぶように
売れるようになったとしたら、受け入れた方も尋常じゃありません

ですが、PS3が技術者観点からでなく、消費者観点から【たかがゲ
ーム機】ではない端末として認めて貰える機能を有していれば、6
万円というゲーム機の適正価格を逸脱する価格であっても受け入れ
られるでしょう。

しかしながら、PS3に含まれてる【たかがゲーム機】ではない部分
、つまり付加価値ですが、その部分は全て技術者観点で放り込まれ
てるものばかりで、消費者が渇望しているものではないところが一
番の問題。

良い者、性能の優れた物を作れば良いというのは、技術者としては
当然の不問律。

だけど、事が売るという部分で論じるなら、良い物だからといって
売れるわけではない。

求められてる物、もしくは、大衆の関心を多いに引き寄せ、好奇心
を刺激するものが売れる物であるというのは今更書くべきことでも
ないでしょう。

しかし、PS3には大衆の求めてる物も無ければ、関心を引き付ける
物も内包されていない。

PS3の特徴として代名詞的に定義付けられる付加価値は【ブルーレ
イ】という新規格の記録メディアを搭載している点であるのは周知
のとおり。

ですが、この【ブルーレイ】が人々の関心の的にならない。
何故なら、大衆はDVDに不満を抱いていないからです。

DVDより便利ですよ。こんな機能がありますよっとアピールしても
、根本的にDVDに不満が無ければ大衆はそちらへ投資をしようとし
ない。

実際の所、DVDは今が定着期。レンタル店ではDVDが主流となり、レ
コーダーも安価になり、メディアもまとめ買いしやすい価格になっ
てきた。

これから数年かけて、DVDは円熟期に入ろうという段階。

そんな時期にブルーレイだ!などと囁いても、大した関心は集めら
れない。特にメディアの切り替えという部分にだけ絞って考えても
、過去を振り返れば不満が飽和状態に達する前に新規格に主流が切
り替わった試しなどないのです。

主流の切り替わり、それは今までを振り返ると、爆発的な速度で切
り替わっていきました。

レコードからCD。カセットテープからMD。VHSからDVD。
動き出した途端、それは一気に津波の様に…

ですが、それには沸点に達した不満があったからこそです。

80年代後期、CDが一般流通に流れ始めると、レコードの不便さから
開放してくれるアイテムとして大衆は一気に主流の切り替えの波に
乗った。

MD、DVDに至っては、いつまで磁気テープなどという化石級の素材
を使っていかなければならないんだっという不満があった。記録し
たものが劣化していく。それでは記録の意味がないじゃないか。

そういった不満がくすぶり続け、飽和状態となっていたからこそ、
新しい規格への乗り換えは爆発的な速度で実現した。

では現在DVDに不満は貯まってるのでしょうか?VHSからDVDに切り
替わっていった頃のVHSに向けられていた不満と同等の欲求不満が
現在のDVDに蓄積してるんでしょうか?

DVDに不満が募り、次世代メディア規格の登場を世間が渇望してな
い以上、PS3に積まれてる【ブルーレイ】は大衆からは【余分】な
物と判断されます。

例え、DVDよりも優れていてもです。

余分な物が付いてる上に価格も高いとなると、それは付加価値では
なく、単なる負荷。そういうふうに大衆は捉えます。

PS2がDVDを搭載したことで、発売当初にバカ売れしたというのを、
市場心理的に的確に理由を理解できていれば、PS3にブルーレイと
いう選択はありえません。

表現を少し変えるとPS3を売ろうとするなら、DVDレコーダー機能と
HDD搭載か、地上デジタルチューナーを搭載したほうが確実に売れ
ます。

だけど、ブルーレイ搭載という時点でPS3を売ろうという意図が真
意ではないのが明白。ブルーレイ規格を普及させ、ブルーレイ市場
の拡大。つまりゲーム機市場を利用して、新しい金山を掘り当てよ
うというのがPS3の真意。

そんな物に、ゲーム機としての魅力が詰まってるわけがない。

確かにPS2ではDVDの普及という副産物により、DVD市場という金山
を掘り当てれましたが、それは上述のとおり、VHSの限界がとっく
の昔に訪れ、不満がジリジリと爆発寸前だったというタイミングだ
ったからであり、それを意図してPS2にDVDという組み合わせは見事
なチョイスだったと言えます。しかし、それがそういう意図であっ
たならばという条件付きですけどね…。

しかし、今回は違う。市場が、そして大衆が求めてる物をゲーム機
の付加価値として搭載したPS2とは違い、PS3は求められてない物を
付加価値と強引に位置付け、それを強要しようとする。

欲を書きすぎて墓穴を掘る。正にその典型です。

そもそも、ゲーム機に搭載する規格に、コストダウンを計れない新
しい規格を放り込むって時点で、奇行と言えます。

この強引な動きを見てると、SCEの母体であるSONYの焦りというの
が明確に見えてきます。

実際、SONYはガケっぷちです。業績は悪化の一途を辿り、主戦場で
ある家電市場では相次ぐ製品の不具合発生により、信用はガタ落ち
。バブルの頃に拡大した多くの事業が事実上の不良債権として延し
掛かり、一時自然撤退と化しつつあったPC市場に再度乗り込むも、
肝心の製品売り上げは低迷、そこに追い討ちを掛けるように、SONY
製リチュウムバッテリーの発火問題が発生。

本来は母体であるSONYが、現状ではSCE頼みといった状態。

企業の再建の旗頭としての役目を託されたのがPS3なんですから、
ゲーム市場、そしてユーザーの観点で製品を作れるはずはないので
す。

そして、すでにほぼ確定ともいえるPS3事業の失敗という未来がす
ぐ近くまで迫っているのです。

そんなSONY、そしてSCEの現状を見てると、何故か、大日本帝国の
連合艦隊を思い浮かべてしまうのはcocだけでしょうか。

必死にプロパガンダを行っても、沈み行く気配は消せず、時流と噛
み合わないまま、理念と理想にしがみ付いて、我こそが!っと唱え
続ける姿は、滑稽でもあり物悲しくも映ります。

さて、比喩はそのへんで止めておくとして、問題のPS3ですが…
下位モデルを5万円に値下げしたといっても、まだまだ高いです。

大衆が購入の同期付けに出来る様な明確なファクターが無い以上、
この価格帯では論外でしょうね。

そして、ソフトも1万超えするものとかも続出気味だそうですし。
勝ち残れる要素が皆無です…。

ほんと、いったいこれからSCEはどうなっていくのでしょう…。

ちょっと哀れみすら感じる今日この頃です。

一応、現在のトップシェアメーカーですから、そのメーカーの没落
というのは、業界にとって無傷で通り過ぎることはできないでしょ
うし、ゲーマーとしてはそこらへんの総合的な影響という面で非常
に心配しています。

今年の年末から、来年の夏までの半年間という物は、業界にとって
今後の5年、10年先を決定付ける程、重要な時期となるとcocは
考えています。

せめて、あと一万価格を下げれたら、どうにかギリギリ勝負出来る
範疇に滑り込めるんですけどねぇ…。

なんとも、切なく、そして苦笑いと溜息にそまる秋の夜なのでした

それでは今回はこれにて。


*原文投稿時間不明の為、00時00分として転機しました。

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