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乙女から見る21世紀のコンシュマー産業の行方Vol.74 真相は別にし、公で語られる事態になったことが重要 前編



英フィナンシャル・タイムズ紙ヘッドライン(1日付)
★ソニー<6758.T>、ゲーム子会社のソニー・コンピュータエ
ンタテインメント(SCE)の久多良木健社長が会長に就任。
昇格人事ではあるが、久多良木氏は日々の業務運営から離れ
ることに。ソニーがビデオゲームのハードウエア製造から撤
退する前兆との見方も浮上。
(元記事はこちら)

ようやくというか、今更というか、上記のような記事が公に出てく
るようになりましたね。

実際、何度もここで書いてますが、撤退するとなれば早いですよ。
一気に瞬く間に撤退処理を行うでしょう。

それは、これも何度も書いたことですが、SCE、つまりSONYはゲー
ム市場がメインフィールドでないからです。

まぁ、皮肉な事に現状のSONY売上高の割合で、事実上ゲーム事業が
メインな状態となってはいますが…^^;

PS3を一台売る毎に2万円強の赤字となるということが強く脚色さ
れていますが、これは別に珍しいことではありません。

本来ゲームハードというのは発売当初は殆どの機種が赤字です。
問題はこれからの展望。つまり量産体制にいつ入れるのか。そして
その量産に伴い製造コストが抑えられるのがいつ頃かの試算に大き
な狂いが生じてるのは確かです。

そして、これはcocの推測ですが、PS3事業の失敗は発売前に久多良
木健社長が製造ペースの遅れに関してSONY本体に向けて皮肉めいた
発言を放った時に既に決していたのではないでしょうか。

かなりの初回出荷台数を用意し、初週販売数で一気にハードウェア
市場のシェア率のリーダーとしての可能性を見せ付けることで、多
額の事業展開赤字を先行投資という名目の確固たる証として、同社
幹部、そして株主、投資家に示せば、先行きは安泰だっという絵図
を久多良木健社長は目論んでいたのではないかと思うのです。

反久多良木一派の牽制か、周知のとおり量産の際の複雑なパーツ構
造による遅れであったのか分かりませんが、PS3は予定していた初
期出荷台数を大幅に下回る10万台しか国内では用意出来なかった。

この時点で技術屋面々の求心に長け、それがいつしか暴走を始めた
久多良木路線と、技術者のエゴの象徴としか言い様のないPS3の崩
壊が決定したのではないかと感じます。

昇格人事と謳ってはいるが、業務運営から外されるというのは、事
実上の失脚であり、久多良木氏が薦めてきたテクノロジー至上主義
及び、それに伴うハイコストマシン開発路線にSONYが「NO」という
答えを出したようにcocには感じ取れます。

今後の展開としては、来年度末までのPS3事業は継続を貫くでしょ
う。しかし、来年度内で今後の展望が立たなければ、つまりハード
普及が芳しくなく、事業を維持するだけで膨らみ続ける赤字の償却
に展望が開かなければ、支える体力を失ってるSONYとしては【撤退
】の選択をすることは十分可能性として考えられるでしょう。

本来SONYは、スーパーファミコンのCD-ROMの開発で任天堂と技術提
携し、その後、同機の開発に関して亀裂が生じ、CDROMゲーム機開
発という残骸だけが残ってしまった所からPS発売へと動き、開発投
資した限りは【ゲーム市場】で利益を得ようじゃないかというスタ
ンスから始まりました。

その後、磁気テープが主流であった映像メディア市場の不満がピー
クに達していた時期に丁度噛み合う形でDVD再生機能付きでPS2を発
売。ここまでは【売る】という意味においては、非常に上手くいっ
てました。

しかし、その頃から既にSCEの足元は危ういものとなっていたので
す。

それは【ゲーム市場】と【家電市場】の双方が持つ特性の違いに
SCEは対応しきれていなかったのです。

家電市場は、主に消費がメインとなる産業で売ることが前提。
つまり買わせればよい。

しかしゲーム市場は意外と消費一辺倒ではないのです。消費と同程
度の割合と言って良いほど重要視されるのが【育成】です。

この育成とは、開発者のそれではなく、ユーザーの育成です。

ゲーム産業は、産業自体がまだまだ若く未成熟な市場です。そして
それを取り巻くユーザーも未成熟であり、更に言うなれば外部から
もたれる産業イメージは多種多様な偏見が織り交じって、ある意味
では混沌としている産業です。

そして、市場の流通の主役であるゲームソフトというものは、開発
者のアイディア一つで斬新な物が突如市場へと投入され、その動き
は散漫で不安定であったりもします。

その為に、ハードを売る為にはソフト、ソフトを売る為には、更に
下地を作るソフトという、家電市場のハード最優先とは全く逆の売
り方を行っていかなければなりません。

具体的にいうと、ソフトに注目が集まれば、そのソフトが牽引とな
りハードの普及が進む。これで更に市場規模は大きくなり利益幅も
広がります。最近ではハードの付加価値がハードの普及台数に大き
く影響するという向きもあるようですが、そういった意見が出る今
尚もってしても、先頃から現在、更に今後暫く続くであろうニンテ
ンドーDSの異常な売れ方はソフトによる影響が非常に高いです。

そういったハードの普及台数を引っ張るソフトというのは、突如沸
いてくるのではありません。勿論計算だけで生まれるものでもあり
ませんが、このソフトは売れる!っと思える企画が動き出せば、そ
れと平行して、その「売れる!」と確信したソフトがユーザーにス
ンナリと浸透していけるように、言うなればプロトタイプのような
ソフトを全く別のソフトとして先に発売し、市場の動向を見たりし
ます。そして、それと同時にその先行投入したソフトでユーザーの
ソフトへの対応力を育成したりもします。

勿論、これらの動きは一社に寄るものではなく、サードパーティの
コンテンツとの兼ね合いも重ねて行われてきてます。これはFC時代
から続く【ゲーム産業】の独特な市場生態なのです。

無論、そのリーダーシップを発揮していたのが任天堂なわけです。

しかし、SCEはハードを売る事だけに盲目となり、PS2時代になれば
、自社開発ラインからユーザーの好奇心を集められるソフトの開発
は極端に衰え、ハードメーカーのコンテンツ開発路線が明確な方向
を示せなくなったことで、サードパーティの方向性もバラバラにな
り、どこがPS2の王道で、どこが奇を衒った路線なのか区別すら付
かないな状態となってしまいました。

ソフト開発において、SCEの揺るがないカラーというものが作れれ
ば、それを起点として、サードパーティは自社のソフト展開の方向
性が決めやすくなります。

ですが、SCEのソフト開発は散漫単発の乱れ打ちで、どこに打ち込
んでるのか判らない有様となってしまった。

結局それは消費するのみで終り、次に繋がることがなく、ユーザー
の育成を促すこともなく、サードパーティに指針を示すこともでき
なくなり、PS2のソフト市場は飽和しきってしまった。

これらの事態を実感する上での事実として、任天堂がFC、SFCで据
え置き型ハードのトップシェアを誇っていたのが10年だったの対し
、SCEはPS、PS2で12年もの間トップに有り続けたのです。

しかしながら、SCEのソフト開発の色というものは大衆一致で浮き
出てくるほど明確な形容詞はあるでしょうか?

そして、任天堂の場合はどうでしょう。言わずもかな…ですね。

この差が【ゲーム産業】などと言われる以前から、石がゴロゴロと
転がり、荒地ばかりが広がる市場を一から耕し、土に肥料を与え、
地道に種を撒き、使った畑を使い続けることなく、養分が少なくな
った畑は休ませ、新たな畑を耕しと、コツコツ切り開いてきた任天
堂と、合理化一辺倒、農薬ばら撒きまくりで、土が砂に変わるまで
収穫サイクルを止めず、砂になってしまった畑は捨て、次の畑を荒
らすというやり方をしてきたSCEの差であると思えます。

こういったやり方では必ず近い内に破綻すると、このサイトの前身
であるgaiaxサーバーで更新を行っていた旧サイトの頃から、幾度
無く警鐘テキストを書いてきました。


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後編へと続きます。

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*原文投稿時間不明の為、00時00分として転機しました。

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