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Elder ScrollsIV:オブリビオン プレイレポート #17

さて、今回も前置きなしです。
早速、ロールプレイ手記の17回目。展開開始です。時間の有る人は
読んでやって下さいな。

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【第一章 出自と運命 #17】

いよいよ皇帝直属の騎士団の本拠地を臭わせる険しい山道と深い雪
に足を取られ、私たちの歩む速度は著しく遅くなった。

雪道というだけでも大変な所に、ブルーマを背中の彼方に送った頃
からやたらと狼の姿が多くなったのも進む速度を更に遅らせる要因
となった。

山賊のような輩ならば、その気配を事前に察知することも容易いが
、相手が雪山をその生息地としてる野性の狼となれば、気配の殺し
方は山賊のソレとは比べ物にならず、どれほど神経を研ぎ澄ませて
も虚を衝かれ対応に遅れが生じてしまう。

自然を捨て、文明の中で生きることを拠り所にしてしまった人間に
とって、この野生そのものが剥き出しとなって存在する雪山の中で
は、自らの力が無力であることを痛感させられる。

幾度も恐ろしい狼の唸り声に冷や汗をかき、真っ白な雪道に鮮血の
飛沫を巻き散らかした夕刻、ようやく人工の物と思える城壁のよう
なものが積もる雪の合間から覗いた。

近づくと、その荘厳な佇まいの城門に息を呑んだ。さすがブレイズ
の本拠地といったところか。

城門脇の立番がジョフリーに気付き敬礼で出迎えると、ジョフリー
から恐らくマーティンの事が知らされたのであろう。その立番は大
慌てて城門を自分が通れる分だけ開き城内へとその姿を消した。

軍属には軍属のやり方がある。格式や古式も重んじられる。それが
どれほど滑稽に思えても、そういった振る舞いと行いが一切のブレ
を生じさせない軍人を作り上げる事は、世の常である。

暫くすると、内側から巨大な城門が左右に内開き始めた。ジョフリ
ーから"いくぞ"っという合図が送られ、マーティンと共にジョフリ
ーの後を追って城内に足を踏み入れた。

城内に入ると、直ぐに長い石階段が迎え、その奥に奇妙な形をした
屋根を掲げる建物が見えた。階段越しに見上げるその風景は今まで
見たことのないような異質な雰囲気を醸し出している。

盗賊の目利きという意味でなく、単純に珍しいものに心を踊らされ
た田舎者として、あちこちをキョロキョロしながら階段を上る私に
、背中に目が有るジョフリーから「顎を引いて背筋を伸ばせ」っと
小声で咎められる。

慌てて顎を引き、背筋を伸ばした私だが、慣れないことはするもの
ではない。そっちに気を取られたことで、階段の歩幅の感覚が狂い
躓いてしまい、前のめりで倒れかかった。

転びそうな私の腕を掴み「いつもの悪党面でかまわん」っとジョフ
リーが言えば、それに素直に頷いてしまったのだから、私は完全に
雰囲気に呑まれていたということのようだ。

階段を登り終えると、そこには確かな訓練によって、その腕と心を
磨き上げた正に精鋭というに相応しい雰囲気を持つ騎士達が、本殿
に続くまでの道の左右に石像のように身動きせず敬礼と共に皇帝の
帰還を出迎えた。

ちらりとマーティンの横顔を見ると、既にその顔からは神父の面影
は消え、何か殺気さえ感じるほどの男の表情に変わっていたのをみ
ると、つくづく"男ってこういった形式ばった世界に触れるとすぐ
にその気になるのだから、単純というか、バカというか…"っと心
の中で呆れてしまった。

仰々しく迎え入れられたマーティンは皇帝陛下としての責務を学ぶ
べく、このブレイズ本拠地に暫く腰を据えることになった。これで
ようやく私の数奇な成り行きの旅も終わる。そう思い至れば溜息の
一つくらい深く出るというものだ。

「誠に大儀であった。そなたに遺志を預けられたユリエル様の見立
ては確かであったな」っとジョフリーが皇帝帰還に沸く城内の隅で
肩を下げ一息吐いてる私の背中に手を回し、珍しい笑顔で労いの言
葉などをくれた。

「もうコリゴリだ…」っと溢した私を見るジョフリーの目がいつも
のソレに瞬間的に切り替わったのを見た私は「ちょっとまって!ま
た何かやらせようって魂胆じゃないでしょうね!」っと続けた。

「忘れたか?アミュレットは謎の組織の手に落ちたままだ」っと静
かに動いたジョフリーの唇に噛み付く勢いで私はにじりよって吠え
た「冗談じゃない!それこそそういうのはブレイズの仕事だろ!皇
帝とここで休暇を楽しもうって算段であいつらは喜んでるのか!仕
事しろ!仕事。アンタ達の本業をね」っと捲くし立てた私に、ジョ
フリーは表情をピクリとも変えず、耳を疑う言葉を突然溢した。

「ブレイズに入隊せぬか?」

その安易でお気楽な発想に私は素直に怒りという表現でジョフリー
を睨みつけ、さらに怒鳴った「なんで私が?悪党の私がブレイズな
んかに入らなきゃいけない。それとも何か、虚ろな未来しか抱けな
いような私を騎士団に入隊させ、それを恩に着せて部隊屈指の忠犬
にでも仕立てあげるつもりか!」っと言えば、ジョフリーの頬が緩
む。

「お前を飼い慣らそうとは思っていない。ただ、そういった選択肢
もお前にあるということだ」っと視線を外して言ったジョフリーに
脇から私は「やなこった」っと悪態を吐くことで、その話を終わら
せた。

何がアミュレットだ!そこまで面倒見れるか。元はといえば、あの
ジョフリーが簡単に見付かるような場所に隠していたことで招いた
結果だろう。なのに何で私がその尻拭いをしなきゃならない。

それにあの門だ、なんだあれは…。いや何であろうと知る必要はな
い。もう関係ないんだ。世界を救うのはブレイズがやればいいこと
だ。

私は盗賊だ。闘技場のチャンピオンだ。そうなんだ、アグロナック
との約束もまだ果たしてない。その約束を果たし、彼を倒して名声
を得、それを傘に社会に入り込んで、たんまり溜め込んでる銭長者
達からお宝を掠め取る大盗賊になるのが私の目的なんだ。

なのに、ここはどこだ。盗賊の仇敵ブレイズの本拠地だ。何もかも
が馬鹿げてる!

そう心の中で現状の怒りを繰り返し爆発させながら、私は本殿を一
人後にした。

「これで、ヒロインごっこも終わりだ。私は元の闇に戻ればそれで
良い」そう呟き、奇妙な形をした本殿の屋根を見上げつつ、城門に
足を動かした時、本殿から私を追うように出てきたジョフリーが「
その気になったら、帝都のルーサーという男が開いてる店に顔を出
してくれ」っと叫んだ。

「その気なんてサラサラないよ!」っと振り向きもせずに、一度だ
け後ろに手を上げたあと、ブレイズ本拠地、曇王の神殿を後にした

>>続く

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◆あとがき(解説や注釈等など)

一先ずこれで次期皇帝陛下の護衛からは離れ、いよいよこの旅の主
目的へと話は軌道修正されます。

ただ、ジョフリー、マーティンという人物とは追々更なる絡みがあ
ります。なので"一先ず"なのです。

長かった…、本当に長かったです。こんな騒動に巻き込まれるなん
て全く予想してなかった旅立ちでしたもの。

思えば遠くにきたものだ…ってやつです。

さて、今回【ブルーマ】という北方都市はスルーしてますが、近い
内に訪れることになるんです。そしてまたそこで事件が…。

このゲーム、ほんと次から次へと偶発的な事件に遭遇します。まぁ
、それらは強制ではなくそれを事件と捉えるか否かもプレイヤーに
委ねられてはいるんですけどね。

気が付けば大冒険ってな感じが多い作品というわけです。

それでは次回からはいよいよ【アグナロックの出自】に関連した物
語に突入していきます。

それでは今回はこれにて。


*原文投稿時間不明の為、00時00分として転機しました。

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