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Elder ScrollsIV:オブリビオン プレイレポート #23

それではロールプレイ手記の23回目。展開開始です。時間の有る人
は読んでやって下さいな。

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【第一章 出自と運命 #23】

【アグナロック】の父の亡骸を背にした私は、怪しい物音が発生し
た方向へと地下室を進んだ。暫く進んでは壁に耳を当てる。そうい
う一見無駄とも思える慎重さが次の物音を捉え、更に方向と距離の
試算精度が高まる。

大きな両開きの扉。私は不気味な雰囲気を纏う地下室の一角にひっ
そりと佇む扉の前に立った。3度の物音。それらはすべてこの扉の
向こうと思える方角から聞こえてきた。

扉を"開かない"という選択も勿論あったのだが、アグナロックの父
を殺めた引け目からか、この地下室の全容を全て把握し、アグナロ
ックに伝えることが少しの詫びにでもなれば…という思いがその時
の私を支配していた。

静かに腰の剣を鞘から抜き、その刃に反射した燭台の炎が僅かに開
いた扉の向こうから吹き出てきた新たな空気で揺れた。つま先をこ
じ入れられる分ほど開いた扉の隙間に顔を持っていった瞬間、眩し
い光が部屋の中で弾けた。

咄嗟に扉に密着していた身体を跳ね上げて距離を取った私の口元は
痛みで歪んでいた。左腿には鉄の矢が刺さっている。僅かに開いた
扉の向こうからその隙間を通して射抜かれたのだ。「待ち構えてい
たってことね」っと現状を理解した私は、次の展開を"待つ"ことが
最も危険だと察知していた。

考えるよりも早く私の身体は目の前の扉に体当たりし、一気に室内
に飛び込んだ。ヒンヤリとした空気が襟元から防具の中に滑り込み
、背中の脂汗を撫でるように通り抜けた直後、並べられた石の棺の
奥から男が飛び出してきた。

左手に握られた剣を振り上げ、左手には魔術の発動を思わせる青白
い光を携えてた。「契約者か!」っと叫んだ私に男の左手が向けら
れ、一瞬で私の全身に痺れに駆け抜けた。

関節の全てが悲鳴を上げる中で、鈍くなった感覚を精一杯奮い立た
せて振り下ろされてくる剣を右手の剣の刃で受け止めた。男と視線
が交わる。深い緑色の瞳の中に精気はなく、そこから放たれるのは
殺意のみだった。

自分の歯で噛み切った頬の内側の肉片を床に吐き捨てると、広がっ
た錆鉄くさい血の味が鈍くなった感覚に正気を戻させた。

僅か目の前数十センチのところで交差した剣を跳ね上げた私は、間
合いを離そうとする男の後ずさりを許すことなく、一気に突進する
。幾度かの鍔迫り合いの金属音が部屋の中で大きく反響し、静かな
地下室は途端に戦場へと変貌した。

詠唱する時間を与えてはまずい。しかも相手は闇との契約者だ。両
手で印は結ばず、さらに片手で魔術を発動させる際に必須な気脈の
制動体勢、俗にいう詠唱体勢を取ることなく魔術を放った相手だ。
その事実は闇の秘術と契約した者を示すことを意味していた。

少しの間すら与えてはマズイ。そのちょっとした呼吸の継ぎ目で魔
術を放てる相手だ。

斬り振る刃を一時も休ませず、その男を攻め立てる私を見て、その
男は一瞬笑みを浮かべた。その予期しない笑みに目を奪われた瞬間
、私の首に背後から何かが絡みついた。

渾身の力で結んだ刀を押し退けて男を吹き飛ばした私は、すぐさま
身をよじって後ろに取り付く何者かを振り払う。

私に振り飛ばされて床に転がった何者かを視線の中心に置いたとき
、微かな恐怖が戦慄となって身体の芯を貫き流れた。その何者かは
…死体だった。しかも随分以前に魂が抜けた死体。つまりミイラだ
ったのだ。

そのミイラが目の前で動いてる。吹き飛ばした男の再度の攻撃の気
配を感じた私は棺と棺の間に身体を滑り込ませ、視線を180度動
かし現状の理解を自分に促した。

"契約者" 闇の秘術に長けたヴァンパイアを仲介とし、一部の感覚
器官を失い、生殖機能も代価しとして差し出す代わりに通常の魔術
の原理を超えた領域で魔法の力を自在に操る力を手に入れることが
できる…っという噂だ。

一部の知識者達は彼らをセカンドヴァンパイアと表現したり、人工
ヴァンパイアと称する者もいる。ヴァンパイアを仲介とするという
部分は共通の事実として認知されてるようだが、その仲介がどのよ
うな行為であるかについての詳細はわかっていない。いや表向きに
は公表されていないといったところだろう。

先ほどの詠唱論理を完全に無視した男の行動からして、アレが契約
者であることは疑いない。そしてその者の秘術で棺に納められてい
た死体が忠実な僕として動き出し、侵入者である私を排除しようと
している。

背中に石造りの棺の冷たさを感じつつ、僅かな時間でそこまで考え
を巡らせた私に迷ってる暇は無かった。命のやり取りをする上での
力では相手が圧倒的に有利であることは疑う余地はない。この状況
では相手の出方など伺っていれば、一方的に殺される。

そう理解した私は、地下室に響き渡る雄叫びを上げながら、棺の影
から飛び出し、その契約者に向かって一気に間合いを詰めにかかっ
た。

電撃が全身を駆け巡った直後に全身が炎に包まれた。連続詠唱だ。
しかし私は怯まなかった。下唇を目一杯噛み続け、痛みの神経をそ
こに集中させつつ男に詰め寄った。

その男も詰められる間合いを嫌って、後退しながら更に電撃の魔法
を浴びせてくる。さすがに堪えた、しかし怯むわけにはいかない私
は全身の痺れを怒りに転化させ、剣を振り上げ男に迫った。

その刃が天を突く位置になった時、突然私の身体から力が抜けた。
振り上げた剣がとてつもなく重く感じ、振り切れないまま、剣を床
に落としてしまったのだ。

ギロリと男を睨むと笑っている。どうやら過重関連の魔法を唱えた
らしい。私の体は今、林檎を一つ持ち上げるのも苦労するような状
態にされているようだった。

ケタケタと甲高く気味の悪い笑い声を纏いながら、その男は私にユ
ックリと近づいてきた。その男の後ろから、ズルズルと何かを引き
摺る音を立てながら、ネクロマンシーの秘術によって彷徨える屍と
化したミイラが蠢き、ゆっくりと近づいてくる気配もした。

「貴様、盗賊か?」思ってたよりは低い声で男が私に問い掛ける。
黙って男を睨み返す私に、男は更に口元を歪めニタニタと笑みを浮
かべた。楽しんでる…。こいつは今から私を殺すことを想像し楽し
んでいるのだ。

「お前の主は私が仕留めたぞ」探りを入れるという意味合いで男に
私が言うと、案の定その男は「主?私は誰にも仕えない。」っと一
笑に伏した。

「ならば、お前はなぜこの薄暗い地下室に篭ってる!外に出てお前
がしたいように何故しない!」そこまで言うと、男の表情は一変し
た。

「貴様に何が判る!!俺は…俺は…あいつにハメられたんだ!!」
そう激昂する男の眉間には深い皺が幾重にも走っていた。「都合の
良い存在にさせられたわけだ」っと言えば「黙れっ淫売!」っと男
の拳が私の顔面を捉えた。

どうやら勘は当たったようだった。殴られる瞬間に男の胸元にある
傷を私は見逃しはしなかった。

この男がなぜここにアグナロックの父と閉じ込められたのかは定か
ではない。しかし、そういう状況の中でこの男はアグナロックの餌
として人形と化していたのだろう。胸元に幾つもある傷は生傷の部
類だ。ヴァンパイアは俗に吸血鬼とも言われる。しかし何も血液の
みを摂取して生きてるわけではないと聞く。あくまで趣向の一つで
あるらしい。恐らくこの男はアグロナックの父の口車に乗せられ、
契約者となったのだろう。地下室から出られないデメリットを科せ
られた形での契約とは知らず…

主ではないというこの男の言葉は本意であり、そこに恨みも含まれ
ていると思われる。

地下室から出られない体にされ、その血をアグナロックの父の慰み
物して使われていたと思われる男の目は怒りに震えていた。

「あの男が居なくなったとしても、ここからアンタは出られない。
そうだろ!」っと炊き付けると「うるさい!だまれ!だまれー!」
っと更に男は激昂する。その精神の乱れから死者召還の術のコント
ロールが保てなくなり、男の背後で蠢いていた屍は床に転がったま
ま動かなくなっていた。

「俺は、あいつに裏切られたんだ。あいつの為に俺は尽くした。尽
くしてきたんだ。契約者の話だってそうだ!あいつが…、あいつが
…」悔しさと絶望、そして癒えない恨み。沢山の感情が絡みきった
男の表情は、恐ろしくもあったが、それと同時に絶望を抱える独特
の美しさも垣間見えた。

自分の運命を呪い、その怒りを私にぶつけようとする男は一つ重大
なミスを冒していた。私にかけられていた荷重変動の魔術の効果は
とっくに消えていたのだ。男の集中力を削いだことで解けたのか、
ただの時間経過で解けたのかは定かではないが、その時の私の体に
は既に異質な荷重はなくなっていた。

「オモチャにされたわけだ」更に男の勘気にふれるような言葉を投
げつけた私は、男が投げつける罵倒の影で指先の一点に意識を集中
していた。

契約者ではないが、魔術には少し自信がある。誰に手ほどきを受け
たのか覚えていないが、そこらへんの術者に負けるような貧弱さは
私の魔術にはない。

指先に今まで溜め込んだことのないような気を集中させきたった私
は、自分の悲哀さを叫び謳う男の顔めがけて腰に結び付けていた布
袋を投げつけた。

咄嗟に避けようとした男が、その投げ付けた布袋の存在で荷重変異
の魔法が解けていたことに気付き、再度魔術を唱えようとする前に
、私の指先はその投げ付けた布袋に向けられた。

次の瞬間、布袋は一瞬にして燃え上がり、男の顔に火の粉と同時に
布袋の中身が飛び散った。「ぎゃぁぁーー!」っと頬や目を抑えな
がら床を転げまわる男の顔には、詠唱数回分の気で発せられた燃焼
魔法の熱で一気に軟化し、ドロドロになったチーズがベットリと付
着し、既にどこまでがチーズでどこまでが皮膚なのか区別が付かな
いほど溶け合っていた。

アップルウォッチのペレニアから弁当と称し、【曇王の神殿】に出
発する朝に持たされたチーズがまだ残っていたのが幸いした。この
ような使い方をしたとペレニアが知れば、大層怒鳴られるんだろう
なっと、既に懐かしいペレニアの姿を思い浮かべつつ、私は泣き叫
びながら転げ回る男がこちらの足元まで転がり戻ってきた際に、拾
い上げた剣で喉を突き刺した。

四肢が激しくビクつき、泡立つ断末魔が短く漏れた喉からは止め処
なく赤黒い血が地下室の石造りの床に溜りを作る頃、僅かに痙攣し
ていた指先の動きも止まり静寂再び棺の並ぶこの部屋を支配したの
を確認し、その剣を男の喉から抜いた。

男の屍をそのままにし、カツカツと石造りの床を踏み鳴らしながら
、今終わったばかりの命のやりとりよりも、別のことに私の意識は
奪われていた。魔法の重ね掛け。そんな芸当が私に出来たのかっと

ゴトンっと再び締められたその部屋の扉を背にした私は一度だけそ
の扉に向き直った。しかしそれだけだ。それ以上のことは何もない
。何が出来るというのだ。哀れんだところであの男は報われはしな
いだろう。なら考えないことだ。今は他に考えることがある。考え
尽くさなければならないことがある。

アグナロックの父が住居の構えを置いていたフロアの方に目を向け
、これからの事を想像したした私は、一つ大きな溜息を溢し、この
忌まわしき地下室の出口へと足を運び出した。

>>続く

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◆あとがき(解説や注釈等など)

今回登場した【契約者】はこの手記の中でのオリジナル設定です。

実際に、今回のような魔術使いがクロウヘイブンの地下墓所に居た
のは事実ですが、なぜそのような所にそのような者が居たのかを考
えた際に考えたのが今回の手記の中で書いた【契約者】です。

魔法の詠唱に関して、印を結ばずっという表現がありますが、ゲー
ム中において主人公も片手で印を結ばず詠唱しちゃってますw

そこで、契約者は【さらに片手で魔術を発動させる際に必須な気脈
の制動体勢、俗にいう詠唱体勢を取ることなく魔術を放った相手だ
。】という風に片手で印を結ばずに詠唱する以上の技量の持ち主と
し、その一方で主人公にも【魔法の重ね掛け。そんな芸当が私に出
来たのかっと…】という表現でタダ者ではないという含みを持たせ
ました。

今回はこの【契約者】という設定を登場させるのと、それに対抗し
得る力を主人公が有しているという伏線を置くことを意図とした回
でした。

ただし、この設定を伏線とし昇華させるかどうかは書いてる本人に
も予測はつきませんw

とにかく今までも後々の為に摘み上げると広がるように、伏線とし
て化ける要素を随所に散りばめてあります。しかし、どこのどの設
定を拾い上げて今後を物語っていくかは定めていませんので、散ら
したまんま捨て置く設定も多いでしょう。

しかし、今回の【契約者】という設定は後に拾い上げる可能性大で
す。ヴァンパイア絡みで一つ大きなプロットを仕上げようと考えて
ますので。

まぁ、そういった物を書くとしても、2章、3章の頃になると思い
ますが…w

とりあえず、一章も完結してない内から、その先の話は早いですね

まずは、さっとさと一章を完結しなければ…

それでは今回はこれにて。また次回もお付き合いよろしくです。


*原文投稿時間不明の為、00時00分として転機しました。

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