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Elder ScrollsIV:オブリビオン プレイレポート #26

なんか月1掲載が当たり前になってきた感のあるオブリビオンのロ
ールプレイ手記です。

次の掲載はまた一ヶ月後なんでしょうか?^^;

いやいや、そうはならないように頑張って書きます。だから見捨て
ないで下さい。

では、余計な無駄話は終りにして早速本編の方に入るとします。

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【第一章 出自と運命 #26】

闘技場の出口を潜り、行く宛ての無い自分の所在無さに少し考えを
巡らせていた時、一人の男が私に声を掛けてきた。

「会場からの歓声。そして貴女が生きて今ここに現れたということ
は、あなたが新しいグランドチャンピオンなんですね!あの無敵の
アグナロックを打ち破った!しかも、聞けば貴女は魔物によって占
拠されたクヴァッチを解放に導いた英雄とのこと。貴女が闘技場に
デビューしてからずっと貴女の試合を見てきたんです。貴女なら必
ずグランドチャンピオンになれる!そう信じてました。今日の試合
は残念なことにチケットが入手できず、会場の外で勝利を祈ること
しかできませんでしたけど…、でも貴女は勝った。クヴァッチの英
雄こそ、無敵のグランドチャンピオンだ!」

どうでもいいが、良く喋る男だ。息継ぎをどこでしたのか判らない
ほど一気に捲くし立てた男の大声に、そして"クヴァッチ" "英雄"
という言葉に周囲の人も反応を示し、一人、二人と周囲を囲む人数
は増えていき、瞬く間に私は"時の人"になった。

「貴女の日常を私は知りたい。貴女と行動を共にして良いですか?
」興奮しているとはいえ、無礼に程がある。

「迷惑だ。後など決して付けるな」怒気を込めて男を一喝した私は
、囲んでる群衆を掻き分けその場から立ち去ろうとした。

「レディ・ラック!レディ・ラック!」群集がそう連呼し始め、本
気で英雄を称える雰囲気が一体を支配しつつあった。

勝手なものだ。何が英雄だ…。ただ群集は退屈な日常の潤滑油とし
て私を道化とし、躍らせようとしてるだけなのは明白だ。

何もしない。何も考えない。ただ消費するだけの毎日に溜息を付き
、そのくせ明日を変えようともしない怠惰を棚に上げ、勝手に時代
や流行を作り出し、一時の熱狂に溺れる。

私はそういった者達の慰み者になるつもりも、そういった危機感を
感じないほど純粋ではない。

「私に構うな!」群集を怒鳴りつけた私は、呆気に取られて静まっ
た騒ぎの隙間を掻き分けるように、その群集の波を這い出た。

世間を敵に回した?いやいや、世間など最初からアテになどできな
い。こちらが助けを求めてるときには手を差し伸べず、叩き込める
気配を感じれば瞬く間に敵になる。味方であった試しなどあるもの
か!

そう心の中で悪態を付いた私は、一先ず波止場地区の自宅へと足を
向けてた。

道すがら、なんどもジロジロと注視され、中には聞こえるように"
クヴァッチの英雄" "アグナロックを倒した英雄"と呟く者とすれ違
ったが、一切無視した。

評判も風評も私には必要ない。今必要なのは、このポッカリと心に
空いた空虚な隙間を埋める"何か"だ。

その"何か"を探さなければと無性に焦り覚えていた私の足は、人並
の視線に戸惑うこともなく一直線に自宅へ進んだ。

その日は、結局夜までベットの上で過ごした。あの日、アグナロッ
クの出自についての調査を彼に頼まれて帝都を出発してからのこと
を一つずつ思い返していた。

長い旅立った。そして色々なことがありすぎた。

それなのに、今の私には何も残っていない。自らの手で消し去った
のだ。

虚しさ。それは孤独を更に深めるには十分で、自分の中に記憶とい
うものが無いという事を改めて思い出させた。

記憶…。そんなことを考えるのは随分久しぶりだ。

帝都を出発してからずっと、そんな思いに心を動かしてる暇がなか
った。そういえば…っと、マーティンを捜索しにクヴァッチへと戻
った際、疲労の為に気絶し3日間眠りつづけた時に見た夢のことを
思いだした。

夢と言うには余りにも生々しく、かといって、その夢から紐解かれ
る事実などはなく、断片的に垣間見たあの風景が何だったのか、今
頃になってやけに気になる。

そんな愚にも付かない事に思いを馳せ、ふと窓の外を見ると眩しい
ほどの月明かりが差し込んでいた。

思わずベットから立ち上がり、部屋を出た私の頭上には大き真円を
描く月が窮屈そうに夜空に浮かんでいた。その美しさが途方も無い
ように感じられ、暫し心を釘付けにされていた最中、突然背後に人
の気配を感じた。しかしその瞬間だった、既に遅く、私の背中に何
かを突きつけて「動くな…」っと暗闇から湧き出た男には似合いの
低く乾いた声に私は縄目にあったに等しい状態となった。

「何者だ…」そう呟いた私の問いに男は答えない。「目的はなんだ
…」そう続けると、男はようやく口を開いた。

「目的は何だ?だと?それはこっちの言い分だ。先節グレイ・フォ
ックスの事をあちこちで聞きまわっていた奴が、闘技場のチャンピ
オンとは…一体お前の目的は何なのだ」

"グレイ・フォックス"シロディール一帯に知れ渡る伝説の義賊の名
であり、生誕から数百年経った今尚も盗賊たちの頭目として君臨し
ているという噂が流れている傑者だ。

「目的って言われてもねぇ。グレイの事は確かに知りたかったよ。
でも、噂は数有れど実体が全く見えてこない。存在するのか…しな
いのかさえも判らない。だから探すのをやめたのよ。面倒だから。
で…、気が付いたら闘技場に立ってた。それだけのことだけど?」
っと身上を掻い摘んで語ると、男は私の背中に押し付けていた何か
に少しだけ力を加え「しらばっくれるな。お前は軍の犬だろ。クヴ
ァッチを救ったそうじゃないか。軍の密命を受けて派遣された工作
員。そうなんだろ?」と囁いた。

「工作員…、面白い見方をするものね。確かに次期皇帝の警護もし
たし、ブレイズの本拠地である曇王の神殿への入場も果たしたよ」
そう言うと、男の手が私の首に回され、その手は皇帝の名、ブレイ
ズの名を聞いたことで確かな動揺を漂わせていた。

「けど、工作員ならとんだ出来損ないだよね。あんたみたいなのに
背後を取られるんだから」っと言うと、男は「グレイを捜してどう
するつもりだ」と話を逸らした。

「どうもこうも、こう見えても盗賊を志願してる身でね。頭目と噂
されるグレイに謁見して、その道の筋ってものを賜っておかなけれ
ば後々面倒なことになると厄介だしさ」っと言うと「嘘をつけ!」
っと男の怒気が高まった。

「信じるも信じないも勝手だけど、私はブレイズに顔が利く、しか
も次期皇帝とは顔見知り、いや昵懇と言ってもいい。そして闘技場
のグランドチャンピオンという確かな技量を持ち合わせてる。利用
価値は高いよ?付け加えるなら、暗殺者ギルドからも誘いの声が届
いたこともあるくらいだ」そこまで言って男が誘いに引っかかった

「盗賊に殺しは御法度だ!グレイの掟では禁じられている!」男は
言い張った自分の言葉のマズさに焦り、私に実害を加え、つまり消
そうと決意し、首に回した手が一瞬力んだ。人の体とは不便に出来
ていて、意識的に力を一点に集中させると、他は無防備になる。戦
いの達人に成れば成るほど、瞬間の動きにすら力は篭らない。全身
に鉄壁の防御を纏う為に決して力まないのだ。

私の首に回されていた男の左手に力が加わった瞬間に、私は背中に
何かを押し付けてる男の右手を後ろ手に掴み捻った。男は慌てて右
手に力を入れる。それをキッカケにして首に回されていた男の左手
の絡みからから抜け、半身を翻し、男の正面に立った。

既にその時点で私の間合いだった。剣は腰に挿していなかったが、
素手でもこの男の首をへし折るくらいの術は体得している。しかも
自分の間合いだ。

数秒の睨み合いを経て、月明かりに照らされた男の口が緩んだ。

「さすがグランドチャンピオンってことか…。もっともその座を降
りるらしいともっぱらの噂だが。で、これからどうするつもりだ。
仮にもグレイを探り、軍に関わった者が進退を明確にせず帝都に潜
伏って言ってもなぁ、正直なところ怖いんだよ。」っと話す男の顔
からは既に刺客の色は消えていた。

「グレイ…、存在するのね?」そう問うた私の目を見つめたまま男
は一言呟いた「柳もそのしなやかさを誇るには、頃合の風が必要だ

私も男から目を逸らさず言った「風向きは?」

「天」男はそれだけ言うと、月明かりも届かない闇へと消えていっ
た。

グレイ・ウルフ…、風か…、面白い。そう一人呟いた私は明日の自
分が見えた気がして、もう一度月を見上げた。

>>続く

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◆あとがき(解説や注釈等など)

さて、一章のまんまですが、今回から新展開です。

一つの目標としていた男を自らの手で葬った彼女が進んでいく道と
は?

その先に待ち受ける隠された事実に触れた時、彼女の運命が在るべ
き姿として現れ、その宿命が彼女に何を見せるのでしょう。

流れるべきでなかった血と流すべきだった血。その真実に到達する
ことは彼女にとって幸せなのか。

彼女が背負う十字架の意味を知る旅へと物語は進んでいきます。

それでは、次回掲載が何時かという確定的な告知は出来ませんが、
なるべく早く書きますので…(つまり今回でストック切れたという
意味です…)


*原文投稿時間不明の為、00時00分として転機しました。

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