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乙女のキネマ論報 其の八

友人に強く勧められたので、映画【ザ・マジックアワー】のDVDを
見ました。

全く期待もしてなかったし、予備知識も一切無い状態で見たんです
が、思わぬ傑作遭遇でした。

映画の概略を書きますと、ザ・マジックアワーは2008年夏に公開さ
れた三谷幸喜監督及び脚本のコメディームービーです。

主な出演は佐藤浩市、妻夫木聡、深津絵里、西田敏行、綾瀬はるか
、小日向文世、寺島進、戸田恵子。

他にも豪華な顔触れがチョイ役で登場します。香川照之、山本耕史
、唐沢寿明、谷原章介、鈴木京香、天海裕希、寺脇康文、石川亀次
郎などなど凄い顔触れが脇役という立場で登場します。

あらすじですが、とある街のヤクザのボスの愛人に手を出した手下
の男が、事の発覚後に命乞いし、話の弾みで溢した軽い嘘がキッカ
ケで伝説の殺し屋を探し出すことに…。期限は短く焦った男は自ら
の命の為に一世一代の大芝居を打つ事になるのだが…。

っとまぁ、あらすじだけではちっとも面白くないんですけど、これ
が意外や意外。三谷作品の最高傑作と言っても良いほど面白い作品
に仕上がってるんです。

特筆すべきは佐藤浩市にコメディをやらせるという切り口がナイス
です。しかも面白い人をやらせるのでなく、ある意味で佐藤浩市に
佐藤浩市風なキャラを演じさせておいて、それを面白おかしく演出
してるような感じなんです。(佐藤浩市が本人役で出ているという
意味でなく、あくまで例え話です)

特に佐藤浩市と西田敏行が劇中で初絡みする一連のシーンは最高で
す。爆笑という種類の笑いが湧いてくるわけではないんですけど、
確実にそして確かな波で笑いが込み上げてきます。

それはそのシーンだけではなく、全編通してコメディ映画としてよ
く練られてるし、役者への芝居の付け方も凄く細かい点まで指示し
てるように感じました。

じゃないと、佐藤浩市があんな変顔をするわけないっしょw

しかもワンショットじゃないシーンで、どっちかっていうと、香川
照之さんか妻夫木さんに絵の焦点を合わせてるシーンなのに、画面
の端っこで変顔を続ける佐藤さんww

とにかく細かい所まで芝居が付けてあって、作品の世界観を完璧に
作りこんだ大作コメディでした。これほどの作品が僅か二ヶ月の撮
影期間で撮られたってのが信じられません。

cocも友人から薦められなければ、全く意識すらしてなかった作品
ですので、これを読んで下さってる方で、まだ観てないって人が居
ましたら是非とも観てください。先ほども書きましたけど、大爆笑
するような破壊力はありません。ですけど観終わった後に、面白い
映画を見たあとの特有の幸せな溜息が漏れることは保証します。

三谷さんが、脚本と監督の両方を手がけた作品は、【ラジヲの時間
】【みんなのいえ】【THE有頂天ホテル】と過去に三作ありますが
、今作の【ザ・マジックアワー】は正しく最高傑作といって差し支
えないでしょう。

有頂天ホテルで、三谷作品の一先ずの完成形を見た感じはしていた
んですが、マジックアワーを見てしまえば、有頂天ホテルがまだ通
過点だったことを思い知らされます。

そして、三谷さんの脚本、監督作品は一貫して物語が繰り広げられ
る箇所が閉塞的な空間であるという特徴があります。

脚本、監督作品の第一作目はラジオブース。二回目は家、三回目は
ホテル、そして4作目となる今作では街となったわけです(街とい
っても極僅かな範囲ですが)

作品数を重ねるごとに舞台設定の間尺は拡大していってますから、
次回作ではどういったところまで広がるのか楽しみです。

つまり、最高傑作なんて言ってますけど、故人ではないわけですか
ら、この先のことは判りません。でも、そう言いたくなる出来栄え
なんです。

ですから、皆さんも是非。

それでは今回はこれにて。


*原文投稿時間不明の為、00時00分として転機しました。

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