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鳴り止まないスパルタンX


三沢光晴さんが亡くなりました。

広島県立総合体育館で13日に行われた試合中、20:30頃ににバックドロップを受けた直後に動けなくなり、間も無くして心配停止状態になり、病院へ緊急搬送したものの、同日22:10に広島大学病院で死亡が確認されたそうです。


正直なところ、今何を書いていいのか判りません。ポッカリと自分の中に埋められない空洞が出来て、その空洞の寒々しさに動揺しているといった状態です。

cocがプロレスを見始めた時期は全日本プロレスでタイガーマスクがマスクを試合中に取り、三沢光晴として活動し始めた頃です。

つまり、cocのプロレス観戦歴というのは三沢さんがマスクを脱いでからの今までと同じなわけで…。有り触れた表現ですが、ヒーローでした。

彼はとても受身が上手く、それはイコールで一流のプロレスラーという意味となります。

プロレスは相手の技を受け、観客に痛さを感じさつつ立ち上がる。それの繰り返しを行う言うなれば、タフさを披露するショーなんですが、よく"あの試合はガチだ"とか、八百長だとかいう論議が出ますけど、ガチはガチでも意味を勘違いしてる人が多いです。

確かにプロレスにもガチはあります。

ただ、そのガチの意味は、俗に言う"尻決め"をせずにタフさを競い合う試合のことを指します。

尻決めとは、"誰がどの技を出したら"とか、誰がこの技のあとにあの技を出したら"という試合の"最後"を予め決めておいて試合をするんです。

2ヶ月くらいで30大会以上を行うような巡業興行が基本のプロレスにおいて、そういった尻決めがあるからこそ興行が継続できるのです。

力量の違いすぎる者同士が戦う場合でも安全の為に尻決めをしておけば、強い側の選手がそろそろ終わりにしておかないと危ないなっと判断することで試合を終わりにすることも出来るので、若手や新人は安心して試合が出来ます。

しかし、こういう尻決めを取り決めない試合もあります。そういう試合は正に我慢比べで、相手の技を受ける、そして立ち上がる。これの繰り返しを延々と行い、どちらかが立てなくなったら試合終了です。これをプロレスのガチといいます。

勘違いしてる人で多いのが、技を受ける時点え八百長だろうという人が居ますけど、プロレスは格闘技ではなく、格闘技術を用いたタフネス勝負というスポーツなので、八百長という表現は残念ながら的確ではありません。

さて、話が逸れましたが、三沢さんは非常に受身が上手いです。"ゾンビ三沢"という異名があるほど、これでもう立てないだろうという技を受けてもスクっと立ち上がってくる選手です。

なので対戦相手は攻め疲れしてしまい、三沢さんの攻撃になった時にそれを跳ね返すスタミナが残っておらず負けてしまうというパターンが多かったです。

それだけ受身に非凡な才を持っていた三沢さんが、バックドロップの受身に失敗して死亡したというのは未だに信じられません。

三沢さんが居たからプロレスが好きになったし、その素晴らしさも理解できました。まだ三沢さんが若手だった頃のジャンボ鶴田さんとの世代闘争でズタボロにされ続けても立ち上がろうとしていた彼の姿には心から感動させられましたし、世代的にジャンボ鶴田さんの強さは判らなかったんですけど、それを教えてくれたのも三沢さんでした。

全日本時代の超世代軍、そして四天王時代は毎週放送される中継番組が待ち遠しくて仕方ありませんでした。

全日本離脱後、ノアを旗揚げして以降はやや精細を欠いていた感もありますけど、ここ一番の大きな試合では不死身とも言える無尽蔵のスタミナでゾンビのように立ち上がり続ける彼はcocにとっていつまでも若手集団の超世代軍の三沢さんでした。

そんな彼がもう立ち上がらない。それが信じられません。

今、三沢さんのテーマ曲【スパルタンX】を流してコレを書いてるんですけど、この曲がこんなに悲しく聞こえるのは初めてです。

橋本さんの時もかなりショックでした。そのショックもまだ記憶に新しい今に…この悲報はツラすぎる。

あまりTVの向こう側の人に感情移入するタイプではないんですけど、自分でも驚くほど三沢さんの死っていうのが大きな出来事として動揺を呼んでる事に自分でも驚いています。

自分の中というか、自分の生きた時間の中でハッキリと自分に影響を与えたり、自分の一時代を染めていた人の死というのはこんなにも空虚な空しさを感じるものなんですね…。

さて…上行を書いてから一時間ほど呆然と、ただひたすらにスパルタンXを聴き続け、その楽曲データには吹き込まれてないはずの"ミィサーワ!ミィサーワ!"という三沢コールがハッキリ聞こえ、過去の壮絶な試合の場面などを思い出してたりしました。

そして、幾分か冷静さが戻ってきたのか、今後の事が心配になってきました。

三沢さんの死亡というのは試合中の事故ですから、対戦相手に罪はありません。しかし、この事故直前に三沢さんにバックドロップを仕掛けた斉藤彰敏選手のことが心配でなりません。

生きる伝説とまで言われた偉大なレスラーを死に追いやってしまったという自責の念で身も心も潰れてしまうじゃないかと…

三沢さんの死因はまだハッキリと発表されてませんが、バックドロップを受けて動けなくなったという状況から考え、頚椎骨折か頚椎重篤損傷だと思われます。

当然、単一原因ではないでしょう。勝手な推測ですが、頚椎損傷→脳幹麻痺→脳内出血→ショック性心不全という蘇生不可能な状態に陥ったのではないかと思います。

レスラーは常人では身動きできない怪我とかでも試合をしてしまえるほど身体は勿論、精神も鍛えてます。そして受身の天才だった三沢さんが最後に残した言葉がレフリーに動けるか?と問われて「動けない」と応えたのが今際の最後となったそうです。

そう考えると、鍛えようが何をしようがどうしようもないのが神経です。三沢さんはもう20年近く首を患ってました。重度なむち打ち状態であるにも関わらず試合をしたこともあります。

三沢さんにとって"首"は唯一の弱点で、それはファンにも周知の事実でした。今回、斉藤選手のバックドロップでの事故ということになってしまいますが、どう考えても頚椎に蓄積されたダメージが遂に限界点を超えてしまったのでしょう。

若手レスラーの試合中の事故死というのであれば、受身が不完全だったという見方も出来ますけど、三沢さんほどの一流の選手がリング上で亡くなったというのは過去に前例が無いのではないでしょうか?

そういったことが、今後のプロレスを取り巻く環境に何かしら大きな変化を呼び込むかもしれません。

危険な技を派手に繰り出し、それをモロに受けたように見せることで観客を喜ばせる。その繰り返しがドンドン大きくなっていき、受ける側にも大きなダメージを伴う技とかでないと観客にウケなくなってきてしまってる。それが現状のプロレスです。

特に脳天から落とす技の多さというのが最近のプロレスの過激さと危険さを物語ってます。

バックドロップにしても、捻り式、抱え込み式、投げっぱなし、高角度、そして脳天落しと、どんどん危険なスタイルへと変化してきてます。

それは殆どの技に言えることです。

だったら、それをどう変えていけばプロレス界にとって良いのか?っという問いには、残念ながら答えることはできません。

今は、ただただ三沢光晴という偉大な1選手のことしか考えが及びませんし、彼の死についてまだ完全に頭も気持ちも整理できてません。

まだまだ何かを書きたい、でも書きたくない。書けない。ごめんなさい。ちょっともう無理だわ。冷静になったつもりで書き続けたけど、やっぱ無理。

スパルタンXがこんなに目に沁みる日がくるなんて…。

この曲で彼が入場してくる日はもう無いんですね。それを認めることがcocに出来るのでしょうか。

ただただ…無念でなりません。




*原文投稿時間不明の為、00時00分として転機しました。

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