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乙女日記 Vol.1910 最後の巨星落つ…



もう世界中の人々に訃報として届いてるであろう、マイケル・ジャクソンの死。

今日に於いて、"スーパースター"と言える最後の人ではなかったでしょうか。

最近のって言っても90年代以降のマイケルはその類稀な楽曲制作の才能、ショートフィルムで繰り広げるセルフプロデュースとしての非凡な才能。そして卓越したステージングダンスなどよりも、整形というゴシップライクな話題が先行して、今の10代の日本の子らは、マイケル・ジャクソン=顔面崩壊という"ネタ"的な一面のみしか知らない人も多いでしょうけど、彼は80年代で既に20年後の未来に通じる音楽を作り、90年代は彼を追いかけることから時代が作られていったといっても言いすぎではないほど、前衛的な存在であり、それと同時に多分な大衆性も無視せずに、その時のその時代の人の目線に合せるというエンターティナーとして非常に優秀な嗅覚も持ち合わせたアーティストでした。

彼をアーティストという部分をあまり知らないという人はyoutubeに行って、マイケル・ジャクソンで検索してみましょう。度肝抜かれるはずです。

特に1982年に発売されたアルバム【Thriller】から表題曲の他にも【Billie Jean】【Beat It】らがシングルカットされメガヒットとなり、それら三曲のPVが当時としては例を見ない完成度で世界中の話題となってから以降の10年は彼が"ミュージシャン"としてとてつもない輝きを放っていた時代でした。

87年に発表されたアルバム【BAD】も前作の1億万枚以上というセールスを記録した後のプレッシャーを難なく跳ね除けるように見事な傑作に仕上げました。

無論、その後も精力的にミュージシャン活動は行っていましたが、いかんせんスキャンダルが多発。金銭トラブル、身内との確執、そして整形疑惑(疑惑ではなく事実なんですが)等など…。

特に彼を考える上で重要なキーワードは、やはり【整形】でしょうね。幼いときからスターとして育ってしまった事は(ジャクソン5というグループでメインボーカルだった)彼の最初の不幸だったのかもしれません。アメリカのショービジネス、しかもジャクソン5というのは当時かなりのスターだったらしいですから(cocさんは生まれてないので当時を知らない)、世間との正常な価値観での接点というのは持てなかっただろうし、何でも思いどうりにしてくれる人らが常に回りに居たと思うんです。でも彼も成長する。自分の目で見て、耳で聞くようになれば、そこにはやはり辛辣な人種差別という問題が彼を悩ませたのではないかと思うのです。

彼は整形しましたが、それは、格好良くなりたかったという美容形成手術ではなく、白人になりたかったんです。

白人になれば、黒人というだけで蔑まされることもないだろうから、僕は白人になるんだっという何とも素直でストレートで純朴な動機がそこにはあったと思うんです。彼の性格、趣味などを調べればすぐわかるんですけど、彼には幼児性の残留性気質がとても強くあります。(子供とすぐに打ち解けられるという気質も心が子供のままだからという見解もあるようですね)

やはり、幼い頃からスターとして育ってしまったことで、友人と言えるような人は誰も居なかったようですし、同年代の人とコミニュケーションをして、感情や思想といったものを擦り合わせて人は成長していくものですから、そういった擦り合わせが出来なかったことで、身体は大人、心は子供のままという側面を持った人間となってしまっていたんでしょう。

黒人だから蔑まされる。だから白人になろうっというのは、あまりにも幼稚性が強い思考の着地点だと感じます。仮に少年期にそうおもった事があったとしても、自ずと自分という存在、つまりアイデンティティの確立が始まれば、肌や目の色といったパーソナリティに何らかの誇りや、反骨精神から生じる意地などが生まれて然るべきなんですけど、彼はそうなる前に白人になろうという考えを具体的な処置という行動で始めてしまった。

【Thriller】が発売される4年前に、マイケルがソロ名義で出したアルバムとしては初アルバムとなる【Off The Wall 】というのがあるんですが(これも名曲揃いの傑作)、そのジャケットに映る彼と、約10年後に発売された【BAD】の彼とでは人種次元で変化してしまってます。

それを揶揄したり皮肉ったりするケースが多いのも事実ですが、cocにはBADのジャケットに映るマイケルを見ると哀れに見えて仕方ありません。

世間的にはBADの頃が一番格好良いとかって言う人が多いようですが、それは残酷すぎる評価です。

BADで、マイケルは黒人では無くなっています。スパニッシュ系の白人に見えます…。だから格好良い。残酷です。

そんな残酷な評価を得るために、彼はあそこまで自分を改造したのかと思うと…。

そして、90年代からの彼は、その人種すらも変えてしまった無茶苦茶な整形の副作用と戦うことに終始します。見るたびに顔の造形が変化していきます。変化するというより崩壊しはじめるから、治す…。しかしベースレベルで弄ってるから、治そうにも治せないから新たに造形する。それの繰り返しです。

そんなことを繰り返す内に、どんどん原型が消え失せ、その話題ばかりに終始してしまった90年代でした。

無論、90年代に発表した作品も名作揃いです。ただ、曲よりもスキャンダルばかりに終始した90年代だったのです。これは残念でなりません。

しかし、スキャンダルにまみれたことで、彼の才能が消えてなくなったわけではありません。

そして、スーパースターであることも紛れもない事実です。

その最たる証拠は"マイケル・ジャクソン"という彼の名は、名前でなく、世界共通語と言っても差し支えないほど世界中に知れ渡っています。それを偉大と言わずしてどう表現すれば良いかわかりません。

そして、彼は死んだ。マイケル・ジャクソンからようやく降りることが出来た。それが不幸なのか幸せなことなのかは判りませんが、世界共通語にまでなったマイケル・ジャクソンというのは、黒人のマイケルが作り上げた白人のマイケルであって、その自ら作り上げた虚像のまま死することは彼としてはどうだったんでしょうね。

本望なのか、無念なのか…。

しかし、1つだけハッキリしてるのは、彼の肌の色が何色であったとしても、彼が作り、世に発表した楽曲は今尚も色褪せることなく、彼の披露した超人的なダンスの素晴らしさは彼の残したショートフィルムの中で永遠に残るということです。

Off The Wall
Rock With You
Don't Stop Till You Get Enough
The Girl Is Mine with Paul McCartney
Billie Jean
Beat It
Thriller
BAD
I Just Can't Stop Loving You with Siedah Garrett
The Way You Make Me Feel
Man In The Mirror
Dirty Diana
Smooth Criminal
Leave Me Alone
Dangerous
Black Or White
Remember The Time
In The Closet
Jam
Who Is It
Scream
You Are Not Alone
Earth Song
This Time Around
HIStory
Blood On The Dance Floor
You Rock My World
Butterflies
Cry

等など…、挙げていけばキリがないほど名曲ばかり…

個人的に【Man In The Mirror】が一番好きです。言葉の壁なんてアッサリ飛び越えて、魂に直接触れてこられるような感覚を覚えた曲です。なので、それだけ埋め込んでおきます(↑のテキストリンクとは別の動画)



そして、彼ほどの"スーパースター"はもう出てこないでしょうね…。

【King of Pops】というのが彼の称号でしたけど、これからは【King of Star Last of Star】と呼ぶのが相応しいでしょう。

それでは、早過ぎる死を惜しみつつ、故人の冥福…、いや、彼にはやはり"Requiescat In Pace"という言葉を贈ったほうがいいかな…。

では、今回はこれにて。


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*追記

三沢さんに続いて、マイケルと…80~90年代の偉大な人がこうも立て続けに逝くとは…、2009年という年は忘れられない年になりそうです。

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*原文投稿時間不明の為、00時00分として転機しました。

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