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乙女のアニメ独り言 Vol.89 崖の上のポニョ

DVDが出てから。2週間ほど経ってますけど、ようやく【ポニョ】を観ましたお。

正直、期待というか、ジブリはもうダメかもしれないなぁって、何となく思ってたんで、劇場で見た人の話とかは話半分で聞き流してたんです。

でも、根拠のない過小評価はいけませんね。ダメかもしれないなんて思ってすいませんでした。

なんつーか、見事でしたね。

まずはそのアニメ技法。絵本のタッチとアニメキャラを違和感無く融合させてるところに感心しました。

絵本タッチをアニメに組み込んでしまうと、どうしてもアニメ絵で描かれたオブジェクトや人物などが浮いてしまい、絵的に統一感が感じられなくなって、やがてそれが違和感を生じさせてしまいがちなんですが、何なんでしょうね、ポニョの自然な一体感って。

ポニョでは登場キャラと一部の乗り物などの機械物意外は全て絵本タッチで描かれてるんですけど、全然違和感ないんですよね。

油断してるとって言い方は適切じゃないかもしれないけど、その一体感が自然過ぎて、背景などの絵本タッチな部分が"それ"だと気付かずにシーンが流れて行っちゃうこともあるくらいで。

あの異質なタッチ同士を違和感を感じさせないという意味で整合性を取りきったってのは、さすがジブリと言っても言い過ぎではないでしょう。

そして、シナリオですが、これも公開後にアニメ業界関連の著名な人らが色々言ってたじゃないですか。

中には"老人の美化した妄想"とまで言っちゃた人も居ましたし。

だから、果たしてどうなんだろうなぁって心配してましたけど、実際はベタもベタ、つーか、王道なシナリオでした。

やっぱりね、王道を王道と表現し、それをやりきるってのは逆に凄いと思うんです。

そして、やはり子供に見せるという前提のアニメの中に入れるべきテーマって、時代が変わってもある程度は不変的なものだと思うんです。

ってか、子供に見て欲しいと思うアニメにそういった王道のテーマを入れないほうがおかしいわけで。

確かにリアリティという意味では、誰かが言った"老人の美化した妄想"であることは当たっていると思う。

でも、それで良いと思うのよ。

その妄想に共感できるか否かが、最も重要なことなんじゃないかって思うんです。

ポニョで描かれる美化された妄想。それを「ケっ!」っと舌打ちして顔を背けるような人ばかりになっては、本当に何もかもが…おしまいになってしまう気がします。

あれを観て、優しい気持ちになれたり、ムズムズしたり、ホンワカしたり、ウキウキしたり出来ることが大切だと思うんです。

同様のジブリ作品を上げるとするなら、やはり【トトロ】でしょうね。

トトロ以降、子供が観ればワクワクして、大人が見ればソワソワ(母性、父性本能を刺激されて)してしまうような作品は無かったですから、久しぶりこういう作品をジブリが作ってくれて、しかもまだまだ全然パワフルだったりしたことに驚いてもいますし、嬉しくもあります。

純真な子供のキラキラした世界を、今という時代にもういちど描きなおしてくれたのであれば、次はワクワクを刺激する冒険活劇の復活なんかを期待してしまいます。

やはり、大きなジブリっ子にとって、ナウシカやラピュタは特別な作品でしょうし、もう一度宮崎さんにそういった冒険活劇を作って欲しいです。

でも、随分と高齢になられてますし、これ以上仕事を続けてほしいと願うのは酷かもしれませんね。

でも、先のことはわかりませんし。冒険活劇の集大成(それがラピュタだったわけですけど…)を今一度総括するような形で是非とも!

ま、そんな勝手なことを無責任に言ってはいけませんね…。

さて、話をポニョに戻します。

今作でcocはちょっと不満というか、もう少し何とか…って思った点があります。

それは、ポニョと人間の振れ合いの中にもう少し摩擦というか、人間の汚さとか身勝手さとか、そういう嫌な部分にポニョが傷つけられてっていう展開を増やして欲しかったですね。そうすることで、シナリオの振り幅はもっと大きくなったろうし、あのラストシーンがもっと際立ったと思うんです。

でも、それを入れすぎると、先発の【河童のクゥ】と丸かぶりしちゃうか^^;

しかも、同じ水生系だしw

ところで、ポニョでもう一つ素晴らしいなって感じたのが、宗介のお母さんのリサですね。

彼女の存在ってが、この映画を観る大人たちに理想的な触媒となってますよね。

そして、そう在りたい。子供と自分の関係という世界を客観視した時に、リサで在りたいと多くの大人が感じたと思うんです。

それがあって、ポニョと宗助の愛くるしい姿に萌えさせられてしまうんですよね。全くジブリといい、山口智子といい、良い仕事するねw

そういう意味では色んな理想が詰まってるんですよね。色んな角度の色んな理想。だたの童話で終わってない。だから多くの人が惹き付けられたんでしょう。

個人的に【もののけ姫】以降のジブリ作品に関して、水準以上の出来であることは認められるんだけど、なんかね…消化不良というか、感想を言うときに「う~ん」って言葉が入りがちな作品がずっと続いてたんです。

しかし、ポニョには「う~ん」はありません。【耳を澄ませば】以来のジブリらしい直球な名作だと認定です。

無論、coc個人の感想ですけどね。

少なくとも"老人の美化した妄想"と言い放った人の作品よりかは面白いですし、後世に残したいと思うのは、やはりポニョの方ですね。

まぁ、どんな創作業界でもそうですよ。その業界の王道、つまりベタを上手く出来ない人にシュールもナンセンスも出来ません。

そうです。やはり基本は大事なんです。そんなことを思い出させてくれる作品でした。

それでは今回はこれにて。


*原文投稿時間不明の為、00時00分として転機しました。

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