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乙女日記 Vol.1972 歴史を描かず、何が大河か…

大河ドラマ。毎年思うんです。あまり出来がよくないなぁって。でもね今年の【天地人】は本当に最悪でした。

なんなんでしょうね。あれは。史科を元にするなり、創作で作られた逸話を組み込むなり、とにかく歴史の出来事を背景にして、その時代に生きた傑物の人生を描くのが大河ドラマじゃなかった?

歴史上の出来事がまず一番重要で、その出来事をキチンと深く描いて、その出来事を通して主人公を描いていく。そんな大前提を放り投げ、時代考証的に有り得ない軟弱思想の男のくだらない生涯を作り上げて、それを放送してるだけという天地人にはガッカリなんて域を通り越して、憎悪すら沸いてきますw

歴史上の人物の人と成りってのは、それこそ会って話したわけじゃないんだから、本当の人物像なんてわからないでしょ。

でも、史科や伝承を材料にして、その時々に起こった歴史上の出来事にどういった関わり方をしていたかの記録を重ね合わせ、この人物がこの出来事に絡んでるというなら、あの伝承とは食い違う思想を持っていたことになるな…とか、この出来事に絡んでる時の彼は史科などから推察できる人物像からして、こういった考えと行動に結論を見たのだろうっとか、あちこちに散りばめられ、僅かに残ってる記録を頼りに時代を駆け抜けた人物の姿を浮き彫りにしていくのが歴史ドラマの面白さの核だと思うんです。

だから、1つの史科、伝承をどう解釈するかによって、色々な人物像が出来上がっていくんです。なので、例えば石田光成をどういった人物として描くかっていうのに、作品毎に違いがでてくるわけです。

なので、この作品での石田光成はこういう人なんですよっていう、通説とは違う解釈で歴史上の人物像に新たな一面を描く場合は、そういう人物になった理由。つまり新解釈の根拠を丁寧に描かないと、唐突すぎるんですよ。

例えば、織田信長。かれは所謂"暴君"として有名ですが、誰かが彼を"暴君"ではなく、ただ他人の顔色を伺って世渡りするような下卑た人物だったと描きたい場合、その根拠を示さず、いきなり三枚舌の信長を登場させては、見ている側は唖然とさせられ、置いてけぼりになります。

【天地人】では、直江兼続という武将を主役に安土桃山時代の武家の世界を描く大河ドラマです。

しかし、この直江兼続という人物の史家はそう多くは残っていません。

天下人の豊臣秀吉に屈しなかった逸話。秀吉没後、誰も逆らうことを恐れた徳川家康に楯突いた男として有名な人物ではありますが、彼をどう評価するかは賛否激しい人物です。

ここで、この兼続を主人公にしてドラマを作る場合、重要なのが彼の行動の辻褄合わせです。

良く言えば、武家の誇りを最後まで貫いた男と言えますが、悪く言えば一代で名門上杉家を没落させた自意識過剰の勘違い男ともいえるわけです。

ただ、通説は人道、武道共に重んじ、義理堅く決して他者を企てによって損益を与えたりすることなく、自ら痛みを甘んじ他者を気遣う律儀者という武将であったと言われています。

しかし、そういった人物であったとした場合、辻褄の合わない行動があるのです。直江家を継いだ御家騒動や直江弾劾状、そして、豊臣側から徳川側への鞍替え。

この、ちぐはぐな行動に至る部分をどう解釈し、どう演出していくか?

それには、歴史上の出来事、事件の細かい描写が不可欠です。

そういった部分が【天地人】に一切無いのです。

まるで、日本史の教科書の箇条書き程度で時事説明をして、あとはお人好しで時代錯誤な平和主義を頑なに貫く阿呆の意地っぱりが、浅はかな知恵で右往左往していくのを描いてるだけw

いくら武将ブームだからといって、あんな浅いドラマを大河ドラマでやるのは…ほんとに勘弁してほしいです。

昨年の篤姫にもかなり閉口させられましたけど、今年はほんと…とんでもない事になってしまいました。

唯一、この天地人で収穫と言えるのは、吉川晃司の信長ですね。これは本当に予想外の好演で驚きました。

粗暴なだけとか粗野なだけ、そしてただの暴君として信長を演じるのが殆どでしたけど、吉川さんの信長は、単純に怖い人物というのではなく、何を考えてるのか判らない不気味さ、しかしその不気味さの奥には常人では理解が及ばない荘厳な思いが秘められてるように感じられ、他を威圧する空気も、動の威圧ではなく、静の威圧。しかしその静の中には激しい動が渦巻いてるという、正にこれぞ信長だ!っと言いたくなるほど見事でした。

一昨年のガクトの謙信も素晴らしかったですし、ミュージシャンと時代劇って結構相性良いのかもしれませんね。

ま、そんな吉川さんという奇跡のキャスティングには拍手しますが、肝心のドラマの評価は論外と言っても差し支えないくらいで…

私的に100点満点で点数を付けるとするなら、吉川さんの好演を除いて考えた場合、8点ってとこですね。

まだ最終回を迎えてませんが、その評価が今後変わることはないでしょう。

それよりも、来年の大河が心配です。心配なんですが、天地人やったあとなら、なにやってもそれなりに楽しめそうという、ハードルの下がった状態でスタート出来る分、恵まれてるかもしれませんねw

それでは、来年の大河を楽しみにしつつ、今回はこれにて終わるとします。

では、また次回です。


*原文投稿時間不明の為、00時00分として転機しました。

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