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乙女のらぶらぶサッカー Vol.119 波乱という名の快挙

実際に戦ってみないと判らない。勝負は時の運。そんな言葉を噛み締めることになった日本の歴史的勝利に身震いしてます。

無論、戦前では3戦全敗が予想の規定路線でしたし、cocもそうであると明言してきました。そう結論付ける材料はアジア最終予選、そしてその後の強化試合で幾らでもありましたしね。

しかし、試合が始まってしまえば、自分の予想なんてそっちのけで、ナショナリズム大爆発で髪の先から、爪の先まで日本代表サポーターと化して応援してしまうのですから、自称サッカー通なんて公言してる人は信用なりませんw

そして、結果は地元開催以外での初の一勝を勝ち取るという、これ以上ない成果を上げてくれた。試合が終わっても一時間くらいは放心状態でした^^;

さて、そろそろ冷静に試合を振り返ってみることにしましょう。

まず、cocが驚いたのがカメルーンの内紛。あれが本当だったことです。

てっきり、同グループのチームを油断させたりする目的のブラフだと思っていたので、大会前にそういったニュースが流れていても、見出しだけ流し見して「姑息な…」っと思ってたんですけど、先のアフリカ選手権で守備陣の崩壊が発端となってチームの中で内紛が起こっているいるという情報は本当だったんですね。

その内紛から生じた不協和音は、チームの不動のゲームメイカーで、アーセナルで大活躍してるアレクサンドル・ソングが自ら出場を放棄するかのような振る舞いを生み、今回の日本戦には出場しませんでした。

カメルーンにとって幾つもある敗因の中で、かなりの割合を占めるのが、このソングの欠場でしょう。このソングの欠場と日本の両サイドハーフに入った、松井と大久保の絶好調ぶりがカメルーン目線でみれば、負の決定的連鎖を生み出してしまいました。

日本のスタメンは先に書き上げた2010/06/04付けテキストでcocが提言した形とほぼ一致し、大久保、本田、松井を前線で起用しました。cocの提言では、本田も二列目で、3列目に長谷部と遠藤、1トップにFWを据えてという形でしたが、実際は本田を1トップで一列目に配置し、長谷部と遠藤の後ろにアンカーとして阿部を配置した陣形となってました。

正直、このスタメンとフォーメーションを見たときに嫌な予感がしたんです。なにせ、大嫌いで…、監督としての資質を微塵も認めてない、あの岡田さんとほぼ戦術的な意見が噛み合ってしまったんですから、心地は良くないわけですw

大嫌いな人と意見が合うのって、なんか気色悪いでしょ?w

ま、そんな個人的なことは置いといて、とにかくcocとしては並べるべき配置で並ぶべき選手が配置された中で開始された試合が始まり、一瞬過ぎってた悪い予感は、大久保と松井の出来の良さに吹き飛ばされました。

とにかく、この2人の動きが素晴らしかった。アテネオリンピックの当時"谷間の世代"と酷評された世代の2人が、ようやく回ってきた檜舞台の大一番でアテネ世代のジレンマを爆発させたかのように、左右を入れ替わり立ち代り駆け抜けて、カメルーンのサイドバックを翻弄。

さっきまで左にいた大久保が右に、今度は松井が左にと、両者が度々入れ替わってサイドアタックを仕掛けるもんだから、カメルーンのサイドバックが対応しきれません。

大久保の直線的で瞬間的にトップスピードまで上げてくる鋭利なドリブルに対応してた矢先、まるで小馬鹿にしたようなノラリクラリとした緩急の激しい曲線的なドリブルを仕掛けてくる松井にチェンジしたりするわけですから、サイドバックとしてはディフェンスの間合いやタイミングが狂わされてしまって後手々々に回ってしまう。

なので、サイドを諦め中央から攻めようとしても、中央の司令塔のソングが不在…。結果、決め手となる攻め手が見出せないまま、松井と大久保の両サイドハーフを起点とされて、日本に主導権を握られてしまったカメルーンは前半早々からイライラしはじめます。

チームの中で内紛が勃発し、試合の中でナーバスになってしまっては、待ってるのは自滅です。

その自滅は、前半終了間際に集中力を無くすという形で現れました。

松井の右サイドでのドリブル突破からのセンタリングというシーンが2本続きました。この2本は右サイドで相手DFをドリブルで突破し、そのままの勢いで右足からセンタリングを相手GKとDFの間に放り込むというプレイでした。この時、松井の蹴ったボールはゴールから逃げていく軌道になります。

いまいち判らないという方は、頭の中で自分が右サイドを走りながら、右足でセンタリングを上げるシーンを想像してみてください。中、長距離のロングキックというのは、大抵はインサイドキックという蹴り方をします。インサイドキックというのは、足の親指の付け根の側面から踵にかけて、つまり土踏まずから足の甲にかけてのポイントで蹴る方法をインサイドキックと言います。

このインサイドキックは、特別な力点の応用を行わないかぎり、右足でインサイドキックすればボールは左にカーブしやすい軌道になり、左足で蹴れば右側にカーブしやすい軌道を描くことになります。

それを踏まえて想像してみてくだい。右サイドを走りながら、ゴールの方向に体を開きつつ右足のインサイドキックでセンタリングをあげた場合、その弾道距離がベストであれば、ボールはGKの手前で左に弧を描き、GKから逃げていくボールになります。

もう少し、技術的な事を書き加えると、敵側のペナルティエリアよりも手前の位置から右足のインサイドキックでセンタリングをあげる場合、軸足の左足がファーポスト(蹴る選手から見て、遠い方のゴールポスト)に向けて一直線上の位置にあるようにし、蹴る瞬間に左肩がゴール中央と一直線上にある位置で打つと、ボールの軌道が安定します。これは前述したとおり、ペナルティエリアよりも手前の位置から蹴る場合の時のことですけどね。

って、昔の少年サッカークラブに、何故か紛れ込んでプレイしていた元サッカー少女の血が暴走しちゃいましたねw

ま、そんな技術的なことを余り深く掘り下げても仕方ありません。とにかく松井は右足で2本立て続けにGKから逃げる軌道を描くセンタリングをあげていたのです。

で、それを伏線として仕込んだ松井は前半38分。先のプレイと同様に右サイドでボールをキープすると、センタリングを上げる素振りのフェイントを入れたのです。この瞬間に、カメルーンの自滅が、集中力を欠くという形で具現化してしまいました。

先の2本で右足でセンタリングをあげていた松井を見てることで、今回も右足ですぐにセンタリングを入れてくると思ったカメルーンの左サイドバックのエムビアは松井のキックフェイントに釣られ、センタリングを防ごうと松井の右側にジャンプしてしまいます。

チームの不協和音、主要選手が何人もスタメンから離脱し、攻め手を欠いて生じたイライラ感が、エムビアの集中力を途切れさせてしまったのでしょう。あんな初歩的なキックフェイントに引っ掛かるなんて、普通は有り得ません。

そして、普通では有り得ないエムビアの行動は、更なる負の連鎖を生み出します。

ゴール前で待ち構えてる5人のカメルーン選手は、エムビアが松井のキックフェイントにまんまと引っ掛かってしまったのを見たあと、松井がボールを左足に持ち変えたのを見ます。

ここで、この5人のカメルーン選手の集中力が続々と途切れてしまいます。

まず、エムビアがキックフェイントで釣られたのを見てしまったことで、松井が右足でセンタリングを上げてきてた選手だという記憶情報が頭の中で再生されたはずです。次に松井が左足に持ち替えたのを見た彼らは、再三に渡って、緩急の激しいドリブルで自分たちのエリアに侵入を試みてた松井の姿が再生されたはずです。

エムビアが釣られたということは、松井の次の行動は何をしてくるにしろ、フリーの状態です。左に持ち替えたってことは、中央にドリブルで切れ込んでくるのか!それとも右足に再び持ち替えてセンタリングか?

その迷いが、カメルーンの5人の選手から、ポジショニングの徹底という意識を一瞬消し去り、ボールの動き、つまり松井の次の一脚の動きに意識を持っていきすぎてしまうという結果を生んだのです。

で、その迷いが生じた一瞬の隙に松井は素早く左足でセンタリングを上げました。恐らくカメルーンの守備陣営はあの瞬間においてはドリブルを強く意識してたのではないかとcocは感じました。

故に、左足で上げられたセンタリングに必要以上に反応してしまい、ファーポスト(蹴る選手から見て、遠い方のゴールポスト)に居た本田がポジショニングを変更したことに気付かず、ニアポスト(蹴る選手から見て、近い方のゴールポスト)にポジショニングしていた大久保の動きのみに釣られ、5人居たカメルーンの守備陣は5人とも大久保の動きに釣られてしまいました。

そして、本田は更に奥まったファーサイドに回り込んで入り、その本田の足元に弾道の早いセンタリングが落ちていったのです。

2本続けてGKから逃げるセンタリングを上げていた松井が、3本目で蹴ったセンタリングは左足から放たれ、弾道はゴールに向っていくボールでした。この蹴り方の場合、ゴールに向っていく軌道を描いてる分、弾道は早くなるわけです。

チームの内紛がゲーム内容にも大きく影響を出してしまい、それにイライラさせられた結果、エムビアの集中力が切れてしまう。それを見た他の選手も釣られて集中力が切れたところに、虚を付く形で松井の会心のセンタリングがゴールに向っていく早いセンタリング放たれ、それがマークを外してしまった本田の足元にドンピシャで合ってしまったのですから、防ぎようはありません。

松井の伏線の張り方と精度の高いセンタリング、大久保の見事なオトリ行動、本田の位置取り。流れとしてはサイドアタックの基本的な行動を3選手がキチンとやっただけで、難しい事は何もしていません。しかし、その基本的なプレイを各々が正確に行った結果です。

正しく、完璧な1プレーでしたね。

しかし…、見てるほうとしては、そこからが地獄でしたw

このまま終われるわけ無い…。いや!意地でもこのまま終われ!と自我が葛藤しだしますし、後半早々に松井を下げるという岡田采配に「やっぱアンタバカだろ!意見が合ったなんて一瞬でも思ったあたしがバカだった!勘弁してくれ!なんで今、松井を下げるのよ!あと15分はいけるっしょ!」っと激昴してみたり、「なんで残り時間少ないのにロングボールを放り込む!時間を使え!キープだろ!キープ!もうサッカーしなくていい。ただボールをキープしてればいいのに、なにしてんのよ!」と罵倒し、それでも最後までサッカーをし続ける選手を見て「だから!サッカーするな!勝ち方なんて関係ないっしょ!手段なんてどうでもいい!勝たなきゃ何の意味もないのに!だから矢野!なんでそこで攻めに行く!バックパスしなさいよ!スカポンタン!」っと喚き散らしたりと…、ほんと大変でしたw

まぁ、勝ったから良かったものの、なんで日本代表って、時間を使うプレーが出来ないんだろうね。

前線まで細かいパスで繋いでは、バックパス。で、中盤でキープしてバックパスってのが国際試合で1-0で勝ってる時の残り時間10分の戦い方の常等手段でしょうに…。

どんだけヒヤヒヤしたことか…。

さて、地元開催以外のW杯では、通算7試合目でようやく初勝利をもぎ取った日本ですが、この勢いに乗って次戦のオランダも撃破っといったように簡単にはいかないのが現実。今回勝利したカメルーンは内輪のゴタゴタで自業自得とはいえ、ベストメンバーではなかった。そのカメルーンでさえ、あれだけヒヤヒヤさせられたわけで…

で、オランダというと、今回戦ったサブ組み中心のカメルーンとは比較にならないほど数段上の力を持つ相手です。しかもカメルーンのように身体能力を武器にして強引にプレイしてくるような未成熟さはなく、組織は洗練されていますし、個々の力量もかなりのもの。更にデンマーク戦では怪我の予後の為に出場してこなかったエースのロッペンが日本戦には出場する可能性が濃厚と…

正直、かなり厳しい戦いになるでしょう。

そして、cocが気になるのは相手国のこともそうですが、ここにきて急激にチーム内で孤立感を高めてる中村俊輔の存在が気掛かりなんです。確かに長引く足首の故障は彼の足がメスを入れなければどうにもならないところまできてるかもしれないという予感を匂わせますが、以前にも書いたようにスーパーサブとしての短時間出場ならチームにとっても十分な切り札としての戦力として活躍してくれるはずです。

ですが、本田に代表のエースの座を追われた落ち行く太陽のような扱いというか、雰囲気が漂ってるのが気になります。実際、俊輔を支持し、俊輔を信頼している選手も多いわけですから、余り"本田!本田!"と騒ぎ立てるのはどうかと思います。

外野のそういう風潮が、選手に何かの失言を誘うことにでもなってしまえば、一気にチームは分裂してしまう可能性もあります。それがどれほど恐ろしい結果を招くかは、今回戦ったカメルーンが身をもって教えてくれてるわけで…

競争という原理で成り立ってるのがプロの世界とはいえ、チャレンジャーの立場である日本代表が更なる勝利を得ていくには、チームという集団の完成度が高まることは必須条件でしょう。

だからこそ、出番の選手が居ます。川口です。チームキャプテンとして今まで代表の支柱となってやってきた俊輔と、これからの本田の2人を上手くまとめて、チームが分裂してしまうようなことがないようにしてくれることを切に、切に…願う次第です。

それでは、随分と長くなってしまいましたが、自分の予想に反して歴史的な勝利を収めてくれた日本代表に心から感謝します。そして、勝手ではありますが、勝ち点3を取った限りは、やはりなんとしてでも決勝トーナメントに進出してほしいです。

サッカーも所詮は球技。そして勝負事。やってみなければ結果はわかりません。例え100回戦って99回は負けてしまうような強い相手だとしても、100回の内の唯一勝利できる1回がいつ訪れるかが重要なわけです。それが19日かもしれません。そうであると、いや、そうなるように真剣に祈りますです。

それでは、その日の良き結果を念じつつ、今回はこれにて終わるとします。


*原文投稿時間不明の為、00時00分として転機しました。

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