ナナオがVAパネルを採用したPC向けモニターをオープンプライス(EIZOダレイクト販売価格:44,800円) で11月12日に発売するそうです。
最近の液晶モニターは応答速度云々と低価格路線が主流になっていたため、どこを向いてもTNパネルを採用したモデルばかりでしたが、ナナオが上記価格帯でVAパネルモデルを出すというのは非常に興味深いですし、今後のモニター商戦の方向性の変化を予感させます。
ところで、TNパネルやVAパネルというのは、液晶画面のパネル部分のことでして、現在主流と言えるのがTN、VA、IPSという3種類です。
それぞれ性能に特徴があり、どのパネルが一番良いのかというのは中々断言できません。しかしながら、どのパネルが一番悪いのかというのには即答できます。無論それはTNパネルです。
TNパネルの悪い点を大きく分けると2点あります。まずは視野角ですが、とにかく上下角、左右角ともに狭いです。並行正面に位置しなければ、即座に色彩がボケてしまいます。そしてもう1点は応答速度です。
応答速度というのは、モニターに接続した端末から送られてくる表示信号を読み取り、液晶を点灯させていく速度のことなんですが、TNパネルはその応答速度が確実に劣っているのです。
3~4年ほど前から、販売されているTNパネル搭載のモニターの宣伝文句に"ゲームに強い"や"抜群の応答速度を実現"などといった文句が備えつけられたりしましたが、それはある意味で大嘘です。
確かにTNパネルで応答速度が速いというモデルはあります。しかし問題はその応答速度の速さの本質です。
TNパネル搭載モデルのモニターで応答速度の速さを訴えてる商品は、ある1点の速さを誇張してるに過ぎないんです。
例えば黒から白への切り替えの速さがそのモデルの最高の応答速度を記録してる場合、その速度を強調して商品のウリにします。
しかし、全てのTNパネル商品は、中間色への応答速度が非常に遅く、パネルによっては特定の色から色への応答速度が極端に遅い場合も珍しくあります。
つまり、TNパネル搭載のモニターがウリにしている応答速度の速さというのは特定の色から色への移行時の速さだけであって、その速さは平均値ではないということです。
あくまでコレは例えですが、黒→白が10、青→黄色が2、赤→緑が3といったような速度(例えの数値は単位等関係なしで数値の高いのが早いものと解釈してください)にバラつきがあるモニターで、ゲームをプレイしたり動画を見たりした場合どうなるでしょう?
色彩の発色はアチコチで滲み、また別のシーンではギラ付き、時にはぼやけてしまうのです。
そこに視野角の狭さが加わるのですからTNパネルは液晶モニターの中では明らかに最低レベルのパネルです。
で、VAパネルというのは、そのTNパネルの弱点である視野角の狭さと応答速度のバラつきを改善したモデルで、TNパネルの上位パネルと考えてもらってOKです。
ただ、TNパネル搭載モニターと比べるとコストが高くつくので、その分割り高になってしまいます。しかしゲームで良く遊んだり、動画を頻繁に再生する用途で使うなら、VAパネル搭載モニターを使って、ようやく標準的モニター環境を得たと言えると思います。
更にVAパネルの中にはメーカー独自の改良が加えられてるものが多数あり、価格面で言うところのミディアムクラスであるVAパネルはそういった独自改良の花形的存在でした。
TNパネルは低価格路線を進みましたので、コストは抑えなければいけません。パネルに独自改良を施しても、それほど大きなコストが掛けられない為に、メーカー毎、モデル毎の差はあまり生じません。
一方、VAパネルはミドルレンジな価格帯の商品ですから、コストの割り振りに結構自由が利きます。故に何かを削って浮いた分のコストをパネルの改良に宛てたりという形で、メーカー毎、モデル毎に性能の差が明確に出る商品です。
しかし、それではVAパネルが一番良いのかというと、すんなり首を縦に振ることはできません。それはIPSパネルというモニターが存在しているからです。
このIPSパネルは主にグラフィカル方面のクリエイティブな仕事をしてる方に向いてるパネルで、色彩の再現力はTN、VAを遥かに凌駕し、発色性能も抜群です。更に視野角も広い。故にハイエンドモデルという位置付けで販売されてきました。
しかし、それではIPSが一番良いのかというと、それにもすんなり首を縦に振れません。IPSパネルの問題点に応答速度の遅さというのがあるからです。
ただ、この遅さというのは平均値での遅さであって、その平均値の並列具合ではIPSが一番優秀です。つまり色によっての応答速度のバラつきが非常に少なく、ギラつきや滲みといった応答速度のバラつきで生じる発色性の悪さというのはありません。
ですが、その平均値が遅いわけです。ですので、ゲームや動画にはあまり向かない…というのが今までの常識でした。
ですので、従来では、TNパネルを底辺として、ゲームや動画に比重を置いた使い方ならVAパネル。総合力と安定感重視のプロ志向ならIPSといった選び方をするのが、モニター選びの1つの基準でした。
しかし、TNパネルの低価格路線は大成功を収め、市場に出回る液晶モニターの殆どがTNパネルとなり、その煽りでVAパネル搭載モデルの展開縮小、製造終了などが相次ぎ、一時期はVAパネルが市場から消滅しかけた時期もありました。
そんな中での、ナナオの低価格VAパネルモデルの登場ですから、この流れは非常に興味深いです。
そして、更に興味深い出来事が…。
LGが実売価格20000円~25000円でIPSパネルを搭載した21.5インチ~23インチモデルを11月に出すそうなんです。
IPSパネルが2万円台って…、どんだけの価格破壊ですか…。ゼロが1個足りてないんじゃ?
重要な応答速度については中間色→中間色で平均14ms偏差4.4ms)中間色→白/黒で6msだそうです(ms=ミリ秒)
この数値ならゲームや動画にも十分です。ってか優秀です。
しかし…2万円台って…。あまりに安すぎて…気味が悪いです。
VAパネルが2万円台で出ても衝撃なのに、20万を超えるモデルなんて珍しくもなんともないIPSパネル搭載のモデルが2万円台ですよ?
絶対に何か…ウラがある!あるにきまってる!
いくらなんでも安すぎますもん。
けど、もしそれが真っ当な製品ならば…、今後の液晶モニターの市場は凄まじく変化、再編されていくでしょうね。
果たしてどうなるのか、そしてLGのウラに何が潜んでるのか非常に興味深いです。
それでは、今回はこれにて。
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■備考■
▼ナナオ、VAパネル搭載のマルチメディア液晶モニター「FORIS FS2331」を11月12日に発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20101028_403122.html
▼LG、2万円台の高輝度IPSパネル採用液晶モニターを発表。21.5インチと23インチの2機種を11月より順次投入。
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20101027_402975.html
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*原文投稿時間不明の為、00時00分として転機しました。