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乙女から見る21世紀のコンシュマー産業の行方 Vol.91 現実味が出てきた夢 後編



【後編スタートです】



このヴァーチャルリアリティシステムの中で動くゲームというのを作るとなると、既存の3Dゲームを少し調整した程度では実現できません。



1人称視点か3人称視点かの違い程度でどうこうなるものではないのです。何故ならゲーム画面を見て遊ぶのと、ゲームの世界に自分が入り込んで遊ぶのとでは根本的に世界そのものが違うからです



VRDの世界では、視点の動きはプレイヤーの頭の動きや目の動きで移動します。アバターキャラを操作するとして、プレイヤーが下を向けば自分の足下が見え、上を見上げれば空が広がります。



ここで重要なのは、ただ視点映像を荷重センサーと連動させることだけではありません。視野角も重要です。VRDを装着しゲームをプレイした際に、視野角が現実の世界と大きく差異があった場合、途端に体験感は消え失せ、奇妙な視覚世界に気持ち悪くなるだけです。



例えば視野角が現実より狭すぎた場合、自分の目に障害が起きたような感覚に陥ると思われます。通常、人の左右視野角は140程度と言われてますから、それが90度くらいに狭くなると、まるで双眼鏡を常に覗いて動き回るような感覚になるはずです。



逆に左右視野角が広すぎるというのも気味が悪くなります。そして同時に視野解像度というのも計算されて作られてないと、おそらく視覚から脳に入ってくる情報の多さに混乱が生じ、下手をすれば頭痛などを招く恐れもあります。



視野解像度というのは現実世界で人の視野角が140度だとした場合、正面を向いた状態で左右の視野角ギリギリに入ってるものは鮮明に見えてません。焦点位置からだいたい左右40度位が鮮明視認域ではないでしょうか。



それが左右140度、端から端まで鮮明に等距離感で表示されていると、一辺に入ってくる情報量の多さで脳が混乱してしまうかもしれません。



仮にその程度では混乱しないとしても、VRDにとって大事なのは体験感ですから、焦点領域の鮮明さ、焦点領域外の不鮮明さをシームレスに演算処理できなければ、違和感が生じ、重要な体験感を得られない可能性が高いです。



遠近感にも同様なことが言えます。近くのものは鮮明に、遠くのものは不鮮明に。つまりVRDゲームで大事なのはどれだけ違和感なく不鮮明な視野映像を演出するかです。



それらをコンテンツ側で作り込まなれば、既存の1人称ゲームをゴーグルモニターで遊ぶのと何らかわりなく、遊びの進化になんて到底たどり着けません。



VRDゲームが目指すべき到達点は、ビデオゲームが全て、仮想現実のアトラクションへと進化するステージです。



想像してください。思い、そして描いてください。プレイヤーは建設中のビルで上層の足場から下層の足場へと掛けられてる細い鉄板を駆け上がって最上階に向かわなければいけません。上を見上げれば最上階は5階。細い鉄板の下には地面が見え、上層に行けば行くほど、下を向けば恐怖が体を駆け抜けます。しかし、その細い鉄板には上層から樽が転がってきます。それをプレイヤーは飛び上がってやり過ごさないといけません。2階、3階と登って行くにつれ、うっかり下を見てしまった時に目に飛び込んでくる地面との距離感に身が竦みます。



このように、初代ドンキーコングの世界観ですら、VRDゲーム化すれば、ドキドキ感満載のアトラクションに変貌します。



ゲームの遊びという根本が全て変わるのです。



無論、ジャンプやダッシュ、そういった動きを視野映像の連動だけでリアルに体感させるのは難しいです。それこそ何十年後かには脳の運動神経や感覚神経に直接刺激を与え、走ってないのに走ってる感覚、ゲーム内で触った物の感覚などもプレイヤーが体感出来る時代は必ず訪れるでしょう。



しかし、それはまだまだ先の話。今はまだ視野角の連動ですら間々ならない段階ではありますが、ゲームがいよいよヴァーチャルリアリティの世界のドアをノックし始めているのです。



SCEがPS4の周辺機器としてProjectMorheus(開発コードネーム)というHMDを開発、ヴァーチャルリアリティの世界にその足を一歩踏みだそうとしてる今、そのProjectMorheus自体はもちろんのこと、ProjectMorheus向けコンテンツの制作チームには精一杯のエールを贈りたいです。



私が言っても、何の意味もないでしょうけど、それでも私は言いたい「その道は間違ってない。信じてただひたすら走ってほしい」っと。







【あとがき】

久しぶりに前後編の長文を書き上げ、ちょっと疲れてます。



書いてる内容自体は同カテゴリーの過去記事で書いたものと重複しまくりですが、現実の進捗状況とそこから生じる熱量が違ってると思うので、伝わるものも少し違ってるんじゃないかと思ってます。



ProjectMorheusがいつ発売になるのかはまだ全くの未定ですが、恐らく来年度中には出てくるんではないかと予想してます。



もちろん、専用コンテンツの開発がうまく行かなければ、せっかくのProjectMorheusも埋もれていってしまいます。なんとかコンテンツ制作陣営には頑張ってもらいたいです。



そして、恐らく同様のシステムを任天堂も開発しているはずですので、今後はHMD式ヴァーチャルゲームの開発競争になるでしょう。



個人的にはヴァーチャル化し、アトラクションとして体験してみたいタイトルの多い任天堂に、一日も早く公に、この開発競争に参戦してほしいと思ってます。ただし、どれほど血迷っても”スーパーヴァーチャルボーイ”みたいなネーミングに寄せないようにしてほしいです。縁起悪いからw



そして、最後に改めて書いておきます。このテキストは100%スマフォで書き上げられたものですw


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