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乙女のアニメ独り言 Vol.101 アルドノア・ゼロ



今期スタートのアニメの中でも、群を抜いて前評判の高かった、虚淵玄(ニトロプラス)原案のオリジナルロボットアニメ【アルドノア・ゼロ】を3話まで見ました。



作画も仕上げも、特殊効果もメカデザインも前評判どおりにとてもレベルの高い仕事で関心しました



しかし…、しかしです…。あれほど事前に”設定に凝りまくってます”といった宣伝をしていたから、とても期待してたんですよ。それがいけなかったのかどうかはわかりませんが、凝りまくってる設定の割に一番肝心なところの設定が甘すぎます。



シナリオの趣旨は戦争なわけです。アルドノア・ゼロのプロローグ部分を掻い摘んで書きますね。



昔、人類が宇宙進出を果たし、月面までたどり着いたとき、月に古代文明の遺物を発見、それはワープゲートでした。人類はそのワープゲートを使い、火星移民を計画実行。その後火星移民側と地球側で対立が生じ、戦争が勃発します。しかし火星移民側は新たに発見した古代文明の遺物”神の力”を使い、地球側を圧倒、その戦乱の中、月は無惨に破壊され、その後停戦に。



といった感じなんです。



まず、ここで違和感を感じます。火星側は圧倒的勝利を納めてるのに、なぜ停戦に応じたのでしょう?



月が壊れてしまったことが関係してそうですが、物語はその停戦状態から、再び戦争状態になっていくことで始まっていきます。何故停戦に応じ、何故停戦状態を解いたのかという点の説得力が冒頭で伝わってきません。



更にまだ違和感が別にあります。物語上、火星側との戦争は15年前となっています。そこで地球側は”神の力”という技術を兵器転用した火星陣営にボロ負けします。その神の力というのは、質量を持つあらゆる物体を吸収、そして消滅させることが出来るバリアフィールドのようなもので、そのテクノロジーの前に地球側の兵器は何も出来ずに敗北したということになっています。



その後、地球側軍部はその敗戦理由を隠蔽。停戦後15年、火星側兵器に通用しない実弾兵器装備の人型戦闘ロボットの開発強化を促し、来たるべき再戦に備えさせた。



で、火星側が謀略によって地球侵攻の大義名分を作り上げて、15年ぶりの戦争状態に突入します。



ここでの違和感は隠蔽工作についてです。隠蔽することで誰が得をしてるのか?武力で圧倒的な敗北を喫したにも関わらず停戦が実現してる違和感の上に、今度は隠蔽工作の目的が伝わってきません。



可能性として、火星側に対抗可能だと思わせ、兵器メーカーに開発を促し、そこでリベートを得て私腹を肥やし、その後火星側に亡命という魂胆の黒幕の仕業という線がありますが、そこらへんを匂わす演出は今のところありませんので、隠蔽されていたという事実だけを伝えられても、違和感しか感じられません。



更に最大の違和感が別にあります。15年前の大火を経て、今日まで誰も見抜けなかった”神の力”の仕組み、そして弱点を普通の高校生が三流作家の推理小説の仕掛けを早々に看破してしまくらいの手軽さで見抜いてしまう点です。



こういうロボット物、戦争物にありがちな主人公の特異性だと片付けるには、あからさまに安っぽいのです。



15年という月日で研究者の誰も気づけなかったほどの謎ではないような仕掛けなんですよ。それこそ三流作家の仕掛けた叙述トリックくらい陳腐なトリックなんです。15年前に壊滅的被害を受け、その後多くの研究者がその謎に挑んだであろういう世界観設定の中で、特別な能力を有してない少年があっさりと見破ってしまう違和感。



設定に凝ってます。力入れてますという宣伝をしたわりに、物語の導入部分が随分と甘いなぁっという印象を受けました。



そもそも、こういう人類対人類の構図で戦争を描くと、どうしても設定が難しくなるんですよ。



コレが未知の異星人が相手というのであれば、価値観も目的も人類の常識から外れていても不思議じゃないので、物語上の”どうして?” ”なんで?”も、そういうものなのですっという強引な設定でなんとかなりますし、それすらも面倒ならマブラブみたいに地球外生命体という存在を敵にしちゃえば、なんとでも理由付けなんて好き放題できます。



そこに逃げず、人類対人類というガンダム的な構図にした心意気は評価しますが、設定の凝り方の方向性というか、詰め所の甘さが随分と目立っちゃてるのが残念ですね。



まぁ、全24話の予定のようなので、今後そこらへんの違和感を解消してくれる可能性もありますから、そういう期待を込めつつの注目作といった感じかな。



ただ…、虚淵玄ですからねぇ。彼を高く評価してる人も多いですが、正直いって彼は密室劇の人だと思うんですよ。現実的な世界観というより、この世界はこういう世界なんですっと限定させた世界観、つまり密室の世界の物語を書かせると非常に良いんですが、今回みたいな現実的な世界観をベースにしたSF物は余り向いてないんじゃないかと思ったりもするんです。



マドマギなんてのは典型的な密室劇だし、ガルガンティアはロボット物SFチックではあるけど猿の惑星をベースにした密室劇でしたし。サイコパスは密室劇ではなかったけど、そうでなかったからか、中盤までの面白さと、ラストの平凡な展開のトーンダウンはちょっと残念だったし…。



いや、別に彼のアンチってわけじゃないんです。寧ろ好きなほうなんです。だからこそ、アルドノア・ゼロみたいな作品と彼という組み合わせに、ちょっとね…。



っと、こういう書き方だとアルドノア・ゼロに関してもアンチ派なのかと思われるかもしれませんが、それも逆です。



凄く期待してるし、今後の調整次第では傑作になる可能性もあると思います。



ただ、惜しむらくは、事前の風呂敷の広げ方がマズかったかなぁっとね



自らハードル上げまくっちゃってましたからね。



とにかく、つまらない作品ではありませんし、アニメオリジナル作品ですから、もっともっと化ける可能性もありますので、今後に注目な作品です。



それでは今回はこれにて。


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