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乙女から見る21世紀のコンシュマー産業の行方 Vol.94 FastFunの功罪#1



未だに散見する”無双系”アクションゲーム。この存在に関してcocはあまり快く思っていません。



一番の問題点は、無双系要素はアクションゲームやそれに準じるジャンルを自滅に追い込んでるからと思うからです。



近年、アニメ業界とそのファンの間で”1話切り”や”3話切り”と言葉が共通認識されるワードとして定着しています。



これは、視聴者が継続してそのアニメを見るか否かの判断をするタイミングを意味しており、1話ないし、3話の時点でそのアニメが成功するか否かが決まってしまうのです。



ここでの成功とは、昨今のアニメ業界のビジネスモデルとして王道でもある、円盤商法。つまりDVDやブルーレイを購入してもらい、そこで利益を得るというもので、逆説的に言えば、そこでの利益を見込んで、TVの深夜枠を買い取り、イベントなどの開催で大々的に販促を行い、円盤の売り上げで制作費用の償却を行うということになります。


こういった商法の成功が成熟してきたことで、現在アニメ業界はバブル状態に突入し、新規製作会社が続々立ち上がり、今まで配給のみに関与してきた大手の映像製作会社自体が、アニメの制作会社を立ち上げる事態に発展しています。言うなれば金の成る木に人は群がるという状態です。



そういった商法が成功しているアニメ業界において、1話や3話といった早い段階で勝負を仕掛けるというのは、アニメという媒体的にとってそれほどミスマッチな方法論ではないと思いますし、それはそれで成立してるとは思うのです。



そして、話をゲームに戻しますが、冒頭で書いた”無双系”アクションゲームは、余りにも安易に、そのタイトルの面白さをまやかし的に早急に提示してしまうことで、肝心のアクションゲームとして核が抜け落ちてしまってるのが非常に多いのです。



確かにアクションゲームというのは、操作していて楽しいというのがゲームの肝です。しかし、だからといって無双系のように、ただただインスタントに爽快感をプレイヤーにワゴンセールしちゃうような方法は本末転倒です。



要は、どこで、どの段階で、どういった頻度で”気持ちいい”という感覚をユーザーに提供するか、それこそがアクションゲームやシューティングゲームが内包するゲームバランスだと思うのです。



昨今では”ゲームバランス”という言葉が、ただの難易度調節のような意味として乱用されるのが多くなってきましたが、そもそもゲームバランスとは、そのゲームのジャンルによって意味すべき事柄は違うのです。



アクションゲームやシューティングゲームが抱えるゲームバランスには難易度の調節も勿論含まれてますが、プレイヤーがいかに気持ちよく操作できるかという要素も深く絡んでいます。



そして、アクションゲームやシューティングゲームとしてやってはいけない手段が気持ちよさの安売りです。



無双系がその最たる例で、ゲーム開始直後から、適当にボタンを押してるだけで、スピーディに、そして鮮やかに敵をなぎ倒し、爽快感が得られる作りになってます。しかし、1時間後はどうですか?5時間後は?同じ気持ちよさを継続して感じられますか?




アクションゲームやシューティングゲームの気持ちよさというのは、その気持ちよさを生み出す課程をどれほど絶妙に制限するか、そのバランスが取れてこそ傑作になり得るんです。


ゲーム開始直後から、いつでもすぐに爽快感抜群の動きが出来てしまうと、すぐにその感覚は麻痺され、快感に鈍感になっていきます。そして無双系のゲームはその殆どが、操作する楽しさの全てのリソースを序盤で出し切ってしまい、後半はただの作業になってしまうのです。そうなると序盤に感じた+評価は、後半の作業感の倦怠感で生じるー評価で食われてしまい、結局凡作として忘れ去られてしまう運命を辿ります。



パッケージソフトという媒体で、何をそんなに急ぐ必要があるのでしょうか。そもそもゲームデザイン出来る人材が圧倒的に不足してるのかもしれません。たしかに序盤から全部出してしまえば楽です。バランスなんて取らなくて良いわけですから。



しかし、そんなのばかり作ってるから、ゲーマーが離れていくのです。自滅ですね。


アクションゲームやシューティングゲームとしてまず重要なのは、何で気持ちよくなってもらいたいかっというコンセプトの核をしっかり持つことです。



例えば、独特なタイミングと浮遊感を売りにした二段ジャンプ。これを繰り出した時の気持ちよさが、このゲームの基本だよねとか。



この敵弾を吸い込んで、一気に逆噴射して敵機を殲滅する瞬間が最高だよねなど、ゲームのどの部分で気持ちよくさせたいかという核をしっかり固定させ、あとはその気持ちよさに導く手順、そしてそれを感じられる頻度の調節を綿密に行い、より気持ちよくなってもらうようにバランスを取っていくべきなんです。



*次回【乙女から見る21世紀のコンシュマー産業の行方 Vol.95 FastFunの功罪#2】に続きます。





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今回のテキストは文量が肥大化しまくったので全4回に分けてアップする予定です。



テキスト自体は一気に書き上げたので、各回がサブテーマ毎に切り離され、最終的にメインテーマに集約されてといったものではなく、ただただ長くなった一本のテキストを唐突に切り離してアップしてます。



ですので全4回を通して1本のテキストであるという前提で読み繋いでもらえたら幸いです。

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