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乙女から見る21世紀のコンシュマー産業の行方 Vol.96 FastFunの功罪#3



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前々回の【乙女から見る21世紀のコンシュマー産業の行方 Vol.94 FastFunの功罪#1】からの続きとなります。文量の都合で分けてアップしているだけですので、今回だけを読んで頂いても趣旨が伝わりにくいと思います。



なので、まずは初回分から読み進めてくださいませ。



尚、↑で直リンクしてますが、ブログ左側のカテゴリーメニューにある【コンシュマー産業の行方】をクリックして貰えば、同カテゴリーのテキスト一覧が表示されますので、そちらからも前回分を辿ることは可能です。



では、前回の続き、本文再開です。

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商業ビジネスなんだから、マーケティングは大事。すごく大事。でもね、ゲーム産業って、単純に商業ビジネスとして括るには余りにも特殊な産業であるという自覚を持った上で、制作側の人等の自分自身へのマーケティング出来てますか?そこ出来てなかったら、売れませんよっていう基本をね、やっぱ最近忘れすぎてると感じます。



今、cocが多くの時間を割いて遊んでるから持ち上げるわけじゃないんですけど、モンハンって多くの類似ゲームが後発で出てますが、モンハンを凌いだタイトルはないでしょ。



別にモンハンが超絶素晴らしいゲームだと提唱するつもりなんてないんです。ただ、モンハンが世に誕生したときに持っていたコンセプト、このゲームのどこで気持ちよくなってもらいたいかという核がシッカリあって、そこに誘導する為のバランスもキチンと練られていたから支持されたというのは紛れもない事実で。



その上っ面の表面だけを似せて作られた作品は市場マーケティング的には正解だったかもしれないけど、作り手側自身のマーケティングが伴ってないから、どこで、なにを楽しませたいかという核が無く、結果モンハンを凌ぐなんてことはできてないわけです。



実際、モンハンの初作は当時あまり売れませんでした。ゲーム本編の中核がオンラインモードであった事と、当時は今よりもっとオンラインゲームに対しての風向きは芳しくなかった頃に、オンラインモードを商品のアピールポイントにしてしまったことで、オンライン=遊ばないという層に敬遠され、確か30万程度しか売れなかったと記憶してます。



尚、オンライン専用ではないにしろ、オンラインモードが中核を成すタイトルが記録した売り上げ枚数として、当時としては異例とも言える好成績ではあったんですけどね。



ただ、ゲーム自体の完成度もあまり良くはありませんでした。かなり荒削りな部分があり、細部の煮詰まり具合がまだまだだなっと感じられる出来映えでした。しかし、それらが改善されて行くであろう続編に多くの人が期待をし、続編は初作の倍以上の売り上げ枚数を記録しました。



そして後に、400万本近くを売り上げる、国内有数のビックタイトルに成長していったわけですが、その要因として大きな割合を占めてるとcocが強く感じるのは、初作を作る際に、何でコレを作るのか、コレのどこを楽しんでもらうかっという核をプロデューサー交代後もブレずにしっかりと堅守し続けた点が大きいと思うのです。



核も持たず、安易にFastFunな作りのインスタントゲームで人目を引くことばかりに神経を向けてるよう作品よりも、結局、万人受けはしないだろうけど、コレを、ココを楽しいと思うから、ソレをやってみせたいというミクロ的なこだわりを持ち続けたモンハンの方が多く売れたという結果は非常に意味のある結果だと感じます。



商業ビジネスとして、売れるタイトル、売れる見込みがありそうなタイトルを作るというのは間違ってはいませんが、やはりそこに”売りたい”以外の作り手の意志が色濃く入ってないと、なかなか大きな成果は出ないでしょう。



そして、そもそもモンハンなんて、400万本売れるようなソフトではないんです。全然万人向けな作りではありませんし。けど400万本売れるんです。なぜ売れるか?それは普段ゲームをあまりしない層が買ってくれたからこそ、400万本なんていうバカげた本数になるんです。



で、その”普段あまりゲームで遊ばない”層に買って貰う上で必要なのは、ゲームバランスなんてもの度外視して、簡単操作で爽快感抜群なんていうアクションゲームにとっての自滅行為などではなく、”評判”なんです。



モンハンに的を絞っていえば、あのタイトルは、ゲーマーが支持し、ゲーマーが育てたんです。その実数には異論も多いでしょうが、現在国内にはゲーマーと呼んで差し支えない層は80万人と言われています。



ゲーマーの定義は難しいですが、積極的にゲームで遊び、ゲーム市場にお金を定期的に落とし、多少ならゲームの為に何らかの犠牲も厭わない人等といった感じでしょうかw


そういったゲーマーに支持されれば、自然と準ゲーマーにも評判は伝わり、準ゲーマーも巻き込まれてしまえば、自ずと普段あまりゲームで遊ばない、ライトでホワイトな層にも評判が届き、ついつい釣られて買ってしまうんです。



無論、そのライトでホワイトな層の人等がモンハンを楽しめたか?という問題はまた別の話しで、あくまでビジネスという点から見れば、そういった人等にまで評判が届き、400万本売ったわけですから、大成功なわけです。



結局、ミクロ的な作り手側の発想、こだわり、そういった熱量がゲーマーに届けば、自然とタイトルは成長していく、ゲーマー達が成長させていってくれる。それがゲーム産業のもつ特殊性です。



どれほどハードスペックが上がって、そのハードスペックに見合ったソフトを制作するのに巨額な制作費が掛かってしまう時代になっても、結局のところ、ナニを、コレを、アレを使って、どう楽しませたいかというサービス精神が伴う野心がそこになければ、人など集まりません。



なのに、そんなの分かり切ってるのに、ゲームバランスを放棄し、ただただ安易にFastFunな作り込みの浅い、核のないゲームが未だに散見してるわけで、そりゃソーシャルゲームにお客さんを取られて当然です。





*次回【乙女から見る21世紀のコンシュマー産業の行方 Vol.97 FastFunの功罪#4】に続きます

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全4回の内、今回はその3回目です。



ここまで読んで頂いたら、ものはついで、是非最後まで読んでくださいませです。

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