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乙女から見る21世紀のコンシュマー産業の行方 Vol.99 未来予想図 #2





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前回【乙女から見る21世紀のコンシュマー産業の行方 Vol.98 未来予想図 #1】から始まった、全4回のシリーズコラムの2回目をお送りします。



是非、1回目から通して読んでくださいませ。



それでは本文を開始します。

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ヘッドマウントディスプレイを用いたヴァーチャルリアリティゲームが台頭すれば、既存のクラシカルなスタイルのゲームは淘汰されるのかっという問題についてですが、これは矛盾してはいるのですが、無くなることはないでしょう。



俯瞰的に遊ぶゲーム、つまり盤面を置いて遊ぶゲームが存命しているのと同じように、クラシカルなスタイルのゲームは一定の支持を得られるでしょうし、経済的に派手な躍進は期待できなくなり、市場は縮小しますが絶滅することはないでしょう。



ただし、市場の縮小が避けられないはずですので、そういった事情から予測するにパッケージソフトの供給は現状と比べ激減するでしょう。そういった意味で、パッケージソフトを走らせるという前提の元で存在している据え置き型家庭用ゲーム機にも大きな変化が起こるものと考えられます。



極論、既存のスタイルの据え置き機は無くなると予想しています。



それに取って変わるということではなく、据え置き機としての役目も携帯ゲームが担う時代になるのではと考えてるのです。



それに関して大きく影響するのが2つ目のキーワード【クラウド】です。



既にクラウド方式オンリーでゲームコンテンツを提供するコンソールもいくつか発売されており、ドラクエ10のDゲーム版、3DS版の提供などでも、その名を目にする機会が増えたクラウドゲーム。



まだ一般的な認知度も理解度も低いので、一応簡単に説明しておきます。クラウドゲームというのはクラウド方式でゲームを配信するサービスのことで、DLゲームやオンラインゲームと何が違うのか、その特徴の違いで理解してください。



【DLゲーム】

基本的にインターネットを通じて、ゲームタイトルの全てのデータを端末にダウンロードした後、ダウンロードしたソフトの実行ファイルを起動させることで、ゲームが起動します。ゲームそのものデータが端末に組み込まれ、端末自体の処理能力でソフトを動かしています。よって、パッケージソフトを動かすのも、ダウンロードゲームを動かすのも、そのソフトの実行ファイルが物理的なメディアにあるか、端末内の記録領域にあるかの違いが生じるだけで根本的には同じものです。言うなればソフトの入手方が違うだけです。



【オンラインゲーム】
原則、ゲームの実行ファイルは端末の中にインストールしたゲームデータの中にあり、そのゲームデータのどのデータを使うか、つまり今描画するグラフィックはどれか、奏でられる音楽はどれかといったような実行指令がオンラインゲームのサーバーから届き、その命令を受け取った端末が自らの記録領域にあるデータを自ら処理して、サーバーからの指令に応答してゲームが動いています。サーバーからはあくまでどのファイルを使うか、どのデータを処理するかの指令を送ってきてるだけなので、ゲームそのものを実行しているには手元の端末です。



【クラウドゲーム】
ゲームの全てのデータはクラウドサーバーにあり、そのゲームデータを実行し、処理するのも全てクラウドコンピューターが行っています。ユーザーからは、入力デバイスの信号のみ、つまりコントローラーのような入力装置のどのホタンを押したかという情報をサーバーに送信し、その信号を受けとったクラウドはその入力信号を実行した結果を動画で配信しています。ですので、ユーザー側はその動画配信を受け取れる性能を有したモニターと、サーバーに入力信号を送れるコントローラーさえあれば、最新のゲームを端末の性能や機種を気にせず遊べます。



このように、クラウドゲームというのはオンラインゲームなどと違って、ユーザー側の端末で処理する負担が圧倒的に軽減されると同時に、PCゲームのような端末の性能を高水準で求められるようなこともありません。



基本的に動画配信なわけですから、配信される動画を高水準で受信できる機能さえあれば、極論どんな機種からでもクラウドゲームはプレイ可能です。



このクラウドゲームと、携帯ゲーム機のスペックアップが丁度良いところで交わる時期が、結構近いのではないかと予想しており、その条件さえ整ってしまえば、据え置き機は不要になるでしょう。



現状のPSvitaのPS4リモートプレイも広義的にはクラウド(ローカルクラウドではありますが)で、そこからさらに正常進化すれば、据え置き機自体無くても、PS4やそれに準じた既存のゲームを携帯機を通して遊べるようになるでしょう。無論、外部モニター出力も付くでしょうし、そうすれば益々もって箱物機は要らなくなると思われるのです。



このクラウドのスタンダード化に伴う、据え置き機の実質的な消滅というのは、テクノロジー的に必然であると思ってはいるのですが、その実現の具体的な時期となると予測が難しいです。



何故ならば、通信というゲーム業界単独ではどうしようもない分野の発展具合が絡んでくるからです。総務省と経産省が通信に関して更なる大幅な規制緩和をしてくれないと、現状の通信インフラでクラウドゲームのスタンダード化は難しいです。



固定回線の光網ですら、まだ万全とは言えず、移動電話回線の規制緩和のテンポは恐ろしいほど鈍足です。2020年のオリンピック開催の前後で何らかの動きはありそうですし、クラウドゲームのスタンダード化はそれを踏まえて、恐らく2025年以降になるのでは考えてます。



前回のヘッドマウントディスプレイを用いたヴァーチャルリアリティゲームの台頭後、暫く共存しつつ、クラウド化に動き出すという意味でもそれくらいの時期が妥当ではないかと思われます。



さて、次回は最後のキーワード【無料提供の実質的な標準化】について話を進めていきます。


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■補足



据え置き機が消滅と書くと、ちょっと乱暴すぎる感はあるのですが、今後の端末のスペック向上を考えると、無くならないと考える方が不自然に思えてなりません。



既存の据え置き機というスタイルではもう、新しい遊びは滅多なことでは生まれないでしょうし、その新しい遊びというのも、据え置き機のスペックが上がることで生まれてくるとだろうという期待値は殆どゼロではないでしょうか?



演算処理が上がり、グラフィックも更に美麗になってPS10が出たとしても、モニターを覗き込んで遊ぶスタイルの中で、もう革命は起きないでしょう。ならPS10といったようなハイスペックの据え置き機は必要ないわけですから、スタンダードゲームはクラウドベースで携帯機に配信され、携帯機のモニター出力で大画面で遊ぶというスタイルで十分な気がするのです。



その方が、スタンダードゲームのスペックアップはしやすいという効果も期待できます。(受け手は携帯機のストリーミング機能を強化すればいいだけになりますしね)



そんなわけで【乙女から見る21世紀のコンシュマー産業の行方 未来予想図 #2】終了です。そして第3回に続きます。次回も是非。

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