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Elder ScrollsIV:オブリビオン プレイレポート #25

随分と間が空いてしまいました…

しかし、未完で終わらそうとかって考えはなく、きちんと書き上げ
るつもりなんですが、なかなかね…

何度も書き上げるための時間作りにしくじったり、書き上げる気分
になれなかったりと…、まぁどれも言い訳ですね…。

でも、書くのが嫌ってわけじゃないので、タイミングさえ合えば一
気に結末まで書くと思います。

すでに結末までの詳細なプロットは完成してますので、創作の負担
は殆どありませんし。

つーことで、ウダウダ言い訳を続けるのもこれくらいにして、本編
スタートといきましょう。

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【第一章 出自と運命 #25】

針が落ちる音すらも聞き取れるほど静寂に包まれた闘技場。空は澄
み渡るように晴れ渡り、今日という日を称えてるかのような蒼が私
の瞳を染める。

頬や首から伝い落ちるのは涙。そう、赤い涙。私とアグナロックが
流す赤い涙だ。

ドサリ…。私の背後でアグナロックの崩れる物音がしたと同時に、
静まり返っていた観衆から割れんばかりの歓声があがった。

居合で振り斬った切っ先を澄み渡る蒼に染まった空にかざしたまま
、カタカタと刃だけが震えていた。

「我が血が…清浄なる今をもって……誇り…たか…き…生を」背中
越しに途切れがちな息の合間を縫って言葉を振り絞るアグナロック
の声を歓声の隙間から聞き取った私は、二度息を飲み込んだあと振
り返った。

脇腹を一文字に切り裂かれ、骨まで突出したアグナロックが倒れこ
み、真っ直ぐな目で私を見ていた。

その視線を外すことなく、剣の握りを変えた私は静かにアグナロッ
クに近づき、彼の胸に切っ先を当てた。

「それでいい。感謝する…アンナ」そう呟いたアグナロックの左胸
にゆっくりと静かに剣先を沈めた私の顔からは、さきほどまでの甘
ったれた女の顔は姿を消していただろう。

スっとアグナロックの胸に潜り込んだ剣先の手応えの無さに儚さを
思ったのが、レディ・ラックと呼ばれた私のひ弱さの最後となった

心臓を貫かれたアグナロックの四肢が不規則に跳ね上がり、やがて
その動きが先細っていた後、二度と動くこと無い骸へと変化した頃
には会場の歓声は一段と大きくなっていた。

新しきグランドチャンピオンの誕生を称えるアナウンスが会場に響
き渡り、興奮した観客の賞賛が飛び交う中、授与されたグランドチ
ャンピオンの証となるメダルを地面に投げ付け唾を吐きかけた私に
対して、観客の歓声は一斉に罵声へと切り替り、新しきグランドチ
ャンピオンを非難した。

そのような罵声を気にもせぬといった素振りで、背を翻し入場口へ
消えていく私の背中に観客が投げ入れた何かが当たったが、それが
何であるかはどうでも良いことだった。

控え室に戻った私にトレーナーが物凄い剣幕で駆け寄り「メダルに
唾を吐きかけるなんて、どういうことだい!」っと詰め寄った。

そんな彼女を私は睨み付け「あんなもの欲しくはない。今日限り闘
技場から去る」っと言えば「そんなこと許されるわけないだろ!ど
んな理由であっても闘士が自ら引退を選択できないのがこの闘技場
の掟だ。死するまで戦う。それが闘士の宿命だったことくらい判っ
てるだろ!」っと怒鳴り返した彼女に私は静かに「なら殺せばいい
。だけど私は黙ったまま殺されはしないよ。挑んでくる奴は切り裂
く。原型を留めないほどに切り刻んでやる」っと言うと、彼女はた
じろぎ、その後に言葉は続かなかった。

控え室の出口に近づく私に、トレーナーのイサベルは「大衆が許し
てはくれないよ。どこに逃げても、逃げ出した臆病者として蔑み、
迫害されるんだ。それでもいいのかい」っと呼び止めてきたが「な
らば殺す。刃を向けるなら殺す。それだけだ」っと堪えた私は、や
り場の無い怒りを押さえ込むことだけで精一杯だった。

これから先、どうするかなんて考えてはいなかった。ただ…アグナ
ロックを殺した自分が許せなかった。彼がヴァンパイアとして覚醒
するという確証は無かったのにだ。

もし、そうなったとしても防ぐ手立てがあるかもしれない。それを
見つけてやることが私には出来たかもしれないんだ。しかし私は彼
を殺した。彼が望むまま…。それが間違ってると判っているのに、
正す術を持ち合わせてなかったという理由で殺した。

そして、それを喜び歓声を上げた大衆を心の底から軽蔑し、憎悪に
近い感情を抱いた。

すべては自分の手を汚して行ったことなのにだ。逆恨み、責任転嫁
、現実逃避、なんとでも言え!私はもう迷わない。闇の世界で闇と
一体になるほどの悪党となり、大衆に復讐してやる。

命のやり取りを肴に酒を煽るような下卑た俗物に絶望を注ぎ込んで
やる。

その時の私の胸にはそうした恨み言しか存在してなかった。

控え室を出た私の頭上には、先ほど闘技場のど真ん中で見上げた青
空が広がっていた。しかし、その時の私にはそれを見上げ、溜息を
溢すほどの感傷すら入る余地はなく、柔らかい陽射しも皮肉にしか
感じられなかった…。

>>続く

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◆あとがき(解説や注釈等など)

この物語の起点とも言えるアグナロックが今回で没したことにより
、主人公の物語は新たな展開を向えることになります。

彼の死が彼女を闇に走らせることになるわけですが、その先に更に
別のものへと繋がって行きます。

最終的に彼女はもう一度後悔します。その後悔の意味が何なのかは
今はまだ書けません。

さて、実際のゲームプレイでもこの手記のようにアグナロックが手
出しをせずに主人公に殺されるのを望みます。

なんとも後味の悪いサブクエストです。誰も報われないような終り
方をサラっと用意しちゃってる所が洋ゲーらしいなぁっと感じまし
たし、そこで何を感じたかで、各プレイヤーのロールプレイにも影
響が出るでしょうから、上手い具合に結論をユーザーに委ねるとい
うスタイルは嫌いではありません。

上質なロールプレイングゲームとは、こういった感じでプレイヤー
の意識の中で物語が創造され一人歩きするように仕向けてる作りの
作品のことであるとも言えると思うのです。

少なくともオブリビオンはそう思えるような作品です。

それでは、次回掲載が何時かという確定的な告知は出来ませんが、
物語として一つのターニングポイントを向えた彼女のその後も読ん
でやって下さいませ。

それでは今回はこれにて。


*原文投稿時間不明の為、00時00分として転機しました。

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